
「売上の根拠は」「結局いくら要るのか」「ダメだったらどうする」。新規事業の案を出したあと、この3つに答えられずに止まっている。そういう状態で、この講座にたどり着いた方が多いと思います。
先にお伝えします。この講座では、会社を辞めて起業する話は一切しません。モデルにするのは、すでにある会社が2本目の事業を始める形です。
■ 数字を先に見ます
使うのは「みなと食品」という架空の会社です。総菜製造、従業員26名、年商3.9億円という設定で、オフィスに冷蔵ショーケースを置いて総菜を1食500円で無人販売する、という案を持っています。実在の会社ではありません。数字も、この講座のための設定です。検算のスクリプトごと資料欄に置いています。
1食500円、1食あたりの変動費が300円。売れるたびに手元に残るのは200円です。月の固定費は144万円。144万円を200円で割ると7,200食。これが利益がゼロになる食数です。1つの拠点で月240食(1日12食×20営業日)売れる設定なので、7,200食は30拠点にあたります。
ここが、この講座の最初の山です。「月に360万円売ります」と言われても、多いのか少ないのか誰にも分かりません。「30の拠点に置いて、1拠点で1日12食」と言い直した瞬間に、営業担当は30社を取れるかを考え始め、社長は自社の営業で月に何件取れるかを考え始めます。損益分岐は、金額ではなく数量で言う。この講座で何度も出てくる考え方です。
■ 初期投資900万円の案が、要る現金1,313万円になります
設備の見積を足すと900万円です。ところが、30拠点に届くまでには時間がかかります。月ごとの現金を積んでいくと、7か月目に底が来て、累積でマイナス413.4万円。900万円と足して、用意しておく現金は1,313万円になります。初期投資の1.46倍で、要る現金の31%は見積書に載っていないお金です。
これが、思いつきの1枚と計画書の差です。見積の合計だけを書いた計画書は、通ったあとに資金が足りなくなります。
■ 都合の悪いことも、先にお話しします
値引きで拠点を早く取れないか、と考えたくなります。単価を450円にすると、1食で残るのは150円。損益分岐は40拠点になります。置ける台数の上限は36台なので、満杯にしても利益は出ません。値引きで拠点を取る作戦は、この事業では成立しませんでした。
小さく始めればいい、という逃げ方も取れません。24台に絞ると、満杯でも限界利益は115.2万円で、現金で出ていく固定費129万円に届きません。変えるのは規模ではなく、固定費の形です。
悲観の見立て(1拠点が月200食)では、36拠点まで置いても利益はゼロです。死なないが儲からない。だから承認をもらうのは標準の1,313万円ではなく、悲観の1,426万円の枠にします。標準の額で通すと、悲観が現実になった10か月目に約113万円足りず、二度目のお願いに行くことになります。
計画の数字は外れます。この講座は、当たる予測の書き方を教える講座ではありません。
■ 撤退の線は、始める前にしか引けません
6か月目の時点で、稼働している拠点が15に届かないか、1拠点あたりが月200食に届かないか、累積の現金の赤字が450万円を超えたか。どれかに当たったら止める。標準どおりなら当たらず、悲観なら当たる高さに置いてあります。撤退したときの最大損失、約1,040万円も、始める前に書いて承認をもらいます。始めたあとは、続ける理由がいくらでも出てくるからです。
■ 進み方
月にいくら売れば回るか(第2章)、いくら要るか(第3章)、どこで止めるか(第4章)。数字を先に固めて、文書はその説明書として後から書きます(第5章)。最後に第6章で1冊に組みます。手元に残るのは10枚の事業計画書と、要約1枚です。
各章の演習は、手本を見る → 一緒にやる → 自分でやる、の順に進みます。数字を持っていない方でも、みなと食品の表だけで最後まで通せます。
■ 誰のための講座か
主に、会社で新規事業の企画・提案を任され、社内で通す必要がある若手から中堅の方に向けて作りました。あわせて、2本目の事業を始めるかどうかを決めたい中小企業の経営者・後継者の方にも。決裁者がご自身である場合は、承認をもらう相手(取引銀行・幹部・共同経営者のいずれか)を先に決めていただきます。1人で決めないための線引きが、この講座で引く撤退の線にあたります。
モデルを26名の会社にしたのは、数字を全部お見せできる規模だからです。数百人・数千人の会社の提案でも、3つの数字と文書の対応は変わりません。間接費の配賦ルールがある会社は、第2章の固定費を社内のルールに置き換えて読んでください。
■ 扱わないこと
アイデアの出し方と発想法、金融機関が計画書をどう読むかという審査の見方、割引率を使った投資理論の3つは扱いません。それぞれ別の領域です。制度の要件にも入りません。減価償却は架空の簡便計算として5年で均していますので、実際の年数は税理士にご確認ください。補助金や創業融資に触れる場面では、制度名や補助率を出さず、現行の公募要領を一次資料で確認していただく形にしています。
■ 手を動かす資料
事業計画シート(6タブ)、プロンプト集4本、10枚の事業計画書のテンプレート、みなと食品の記入済み見本、そして数字の検算スクリプトです。AI演習が2本あり、初期投資の抜け探しと、慎重な決裁者としての反論はAIに任せます。金額を決めることと、撤退の線を決めることは、自分でやります。AIが出した金額を、そのまま計画書に書いてはいけません。AIは無料で使える範囲で足ります。
■ 講師について
中小企業診断士 独立系FP。複数の会社を創業し、いまも複数の会社を経営しています。数字を作って出す側も、出された数字を読んで判断する側も、両方やってきました。その両方の立場から見て、通る計画書と通らない計画書の違いははっきりしています。
見終わったとき、あなたの手元には10枚の事業計画書1冊が残ります。本編は全32本、約3時間です。まずは、4つの数字を入れるところから始めてください。