
コースの目的と全体像を確認します。また、コース成功の条件について、以下の点をお伝えします。
・楽しく取り組むこと
・どのようなロジックで施策が検討されているかをしっかり理解すること。様々な立場があるが、どのような根拠でそう言えるのかを確認すること
・最終的に政策は国民のもの。自分ごととして捉えていこう
まず初めに日本銀行(日銀)の役割を押さえましょう。基本的には紙幣・硬貨を発行・維持管理することや決済機能の維持などのインフラ機能が重要です(それだけでも非常に大変なことです)。そして、追加的な役割として金融政策の実施があるということです。これは日銀法に「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と書かれており、ここでは「物価の安定」と「国民経済の健全な発展」というキーワードを押さえましょう。
金融政策の大きな目的である「国民経済の健全な発展」について考えます。基本的にはGDP(国内総生産)の増加を意味しており、各国でその内訳には特徴が見られます。また、「健全な」という点をどのようにとらえるかというのは今日的な課題であり、例えば米国はマクロでみれば成長していますが、内部の格差は問題視されるでしょう。ぜひ受講者の皆さんも「健全な発展」とは何かについて考えてみてください。
次に「物価の安定」について考えましょう。物価が安定することはなぜ経済にとって重要なのか、そして安定とは何を指すのか、日本はそれを巡って過去10年以上議論されてきたと言っても過言ではありません。ここでは大きな意味で物価安定の意味を考えます。
ここで中央銀行の金融政策の手法について概要をつかみましょう。金利の上げ下げによってどういう経路で経済に影響を及ぼすのか、必ずそのロジックを押さえてください。また一方で、その経路がそれほど自明でないことも重要で、それが金融政策の限界にも影響してきます。
物価の安定という観点では、もともと日銀は金融政策でそこまで影響を与えることはできないと考えてきました。経済は複雑な現象であり、金利の上下だけで操作できるようなものではないからです。ただ、リーマンショック以降の急激な円高進行の中で、日銀脳消極的な姿勢に大きな批判が寄せられることになります。そして、第2次安倍政権が誕生する中で、日銀としても円高是正に大きく踏み込む施策をとっていきます。物価の安定という目標についても、その過程で大きく変容することになりました。世間の風潮が政策に大きく影響するという点で、この流れは必ず押さえておいてほしいと思います。
金融政策に期待がかかったとはいえ、やはり経済は複雑なもので、様々な変数の中で総合的に決まっていくものです。金融政策によって何ができて何ができないか、消極的過ぎてもいけませんが、過信してもいけないということを今の段階で私たちは認識しておきましょう。
補足として、日銀の社会に対するコミュニケーションに触れておきます。どのように情報発信をしているのか、何を調べれば日銀のスタンスが分かるのか、興味のある方は是非参照してください。
同様に、米国FRBのコミュニケーションについても整理しておきます。基本的に各国同じような方法をとっていますが、微妙に内容が異なる部分もあります。米国の金利は日本にも大きく影響しますので、是非どういう仕組みになっているかを把握しておいてほしいと思います。
ここからは、より踏み込んだ内容として、物価はどのように決まるのかを探っていきましょう。まずは導入として、物価と言っても様々であること、またどのように抽象的な「社会全体の物価」を決めているのかという点を解説します。
物価を決める要因について、外部要因と内部要因を考えましょう。外部要因はエネルギーや鉱物資源、穀物といったコモディティ価格と為替のことです。内部要因は国内の需要と供給のバランスと言ってよいでしょう。外部要因のうち、とりわけコモディティ価格については金融政策で何かできるわけではありませんが、内部要因と為替については金融政策が影響を与えることが可能です。その仕組みと、何に注目すべきなのかについてここで押さえましょう。
ここで、コロナ禍における米国の状況を踏まえ、21年6月の時点で自分がFRB議長であればどうするかを考えてみましょう。与えられたデータをもとに、経済を予測し、金融政策に何ができるかを考え、その上で自分なりの結論を出してみてください。
演習問題の回答例です。実際の米国FRBがどうしたのか、その理由も押さえましょう。
賃金の上昇がサービス価格を上げ、その結果としてインフレが起きているのが米国です。マクロでみれば、米国はインフレ率以上に賃金が上がっており、良いスパイラルになっていると言えます(もちろん、内部では格差が拡大し、政治不安を招いています)。ここでは日米のインフレの中身を比較し、もしインフレを起こすのであれば何が必要なのか、インフレの条件としての賃上げについて考えます。
参考として、公共サービスの物価推移を見ておきましょう。公共サービスの値段が上がらないことは一見良いことですが、それによって賃金が上がらなかったり、あるいは生産性を高める努力が少なくて済むなど、長期的には問題も発生します。日本と他国の差を考えてみましょう。
賃金のテーマとして春闘に触れておきます。春闘自体は大企業の労働組合だけの話ですが、それが基準となって非正規雇用その他の賃金が上下します。過去の春闘の結果を踏まえながら、今どの程度の賃上げが求められるのかを考えてみましょう。
もう一点、米国雇用統計についても簡単に触れておきます。マクロ経済指標の中でも重要性の高い指標で、米国の金融政策は「物価の安定」と「雇用の最大化」というデュアルマンデートを抱えています。市場も大きく動く指標ですので、その意味合いを押さえておきましょう。
ここから、物価に大きく影響する為替の決まり方について考えましょう。まずは短期的な要因としての金利差です。また、為替介入についても触れておきます。
次に中期的な変動要因として貿易収支を挙げておきます。日本は製造業の海外展開によって輸出が減り、現地生産へ切り替えてきました。そうした構造変化などによって、いま貿易収支に大きな変化が生じています。構造的に今後日本が円高になることはあるのだろうか、是非皆さんも考えてみましょう。
3つ目として、長期的な変動要因としての物価を挙げます。これはよくビックマック指数などで言われる購買力平価と呼ばれるものです。物価差は長期的に為替で調整されるという前提に立つもので、参考程度ではありますが、大きな力学として押さえておくとよいでしょう。
ここで小演習として、円安は経済にとって良いのか悪いのかを考えてみましょう。もともと日本は輸出が中心であり円安がよいのだと言われ続けてきましたが、それは本当でしょう。また、自国の通貨を安くすることに本当にメリットがあるのでしょうか(国益にかなうのでしょうか)。折しも円安が進行している昨今だからこそ、ぜひ考えてみてください。
次に、インフレ/デフレの是非についても考えましょう。デフレスパイラルに入ると、企業業績が下がり賃金も下がり、どんどん需要が落ち込んでいくと言われますが、インフレはインフレで問題です。特に2024年は世界的にインフレのせいで政治が大きく不安定化しました。インフレか、デフレか、改めてそのメリット・デメリットを整理しましょう。
ここで物価の決定要因、為替の決定要因をまとめておきます。どのようなルートでそれぞれ決まり、だからこそ政策決定者は何を見ているのかを再度振り返ります。ご自身で説明できるようにしておきましょう。
ここからは金融政策の手段である「金利」についてみていきます。まずは政策金利の推移を概観し、様々な金利概念について触れておきましょう。
政策金利はどのような基準で考えたらよいでしょうか。政策金利は社会における貸出の基準金利になりますから、調達金利として適正かどうかということになるでしょう。ここでのポイントは、その社会の経済成長はどの程度かという予測です。それを超える調達金利を提示すれば景気を冷やすでしょうし、それを下回る調達金利を提示すれば、皆が借り入れを行い景気が過熱することになるでしょう。社会全体の経済成長率をどう考えるか?がここでの議論です。
潜在成長率にインフレ率を加えると名目ベースの潜在成長率となります。単純に考えると、それが景気にとって中立的な調達金利ということになるでしょう。もっとも、近年は潜在成長率(供給面から計測した成長率)よりも本当の経済の成長率(需要サイド)は低いんだという議論も強くあります。ここでは自然利子率や中立金利という概念を押さえましょう。政策金利を考えるうえで最重要ともいえる部分ですので、しっかり理解してください。
為替目的での政策運営はしない約束とはいえ、あまりに急激な変化が起こった場合は介入が行われます。金融政策においても、金利は為替の変動要因として意識されていることは間違いありません。為替と金融政策の関係を少し見ておきましょう。
ここでは発展編として、中立金利の期間を延ばしたものとして均衡イールドカーブというものを紹介します。実際の計測・推計は難しく、あまり実践で使われるものではないものの、概念を理解できるとより全体が立体的に理解できると思います。
もう一つ発展編として、日銀の国債買入れの効果の理解について触れておきます。今までよくある議論は、日銀が国債を買うことで民間銀行に資金が入り、それが元手となっと民間企業などに広く資金供給されるというものでした。しかし、少なくとも日本においてはそのような現象は見られず、また銀行としても日銀に資金供給を受けずとも民間記号に貸し出すことは可能なことから、そのような効果は認められないといってよいでしょう。あくまで国債買入れの効果は長期金利を下げることと改めて整理しておいてほしいと思います。
次に2つ目の演習として、日銀のマイナス金利解除の判断について考えます。今回は黒田総裁退任のタイミング、2023年4月の段階で新総裁であればマイナス金利を解除するかどうかという点を判断してみましょう。様々なデータを記載してありますし、他の政策委員の声という形で両方の意見を書きましたので、それらを参考にしながらご自身で結論(解除する/しない)を出して、次に進んでいきましょう。
演習の回答例です。実際の日銀の判断も説明しています。
ここで金融政策における金利はどのように決めるのかをまとめておきます。この1章(3)が本コースの中で最も理解しづらい部分ですので、何度も復習してほしいと思います。
ここからは日本の金融政策についてみていきます。改正日銀法が1998年ですが、ちょうどバブル崩壊の時期と重なっており、日銀の金融政策は荒波での船出となりました。バブル崩壊後の日本の課題について触れ、どのような金融政策の余地があったのかを見ていきましょう。
ここではフォワード・ガイダンスの内容・副作用・日銀の取り組みについて説明しています。
ここでは量的緩和の内容・副作用・日銀の取り組みについて説明しています。
ここでは質的緩和の内容・副作用・日銀の取り組みについて説明しています。
ここではマイナス金利の内容・副作用・日銀の取り組みについて説明しています。
ここではイールドカーブ・コントロール(YCC)の内容・副作用・日銀の取り組みについて説明しています。
ここで改めて黒田日銀の異次元緩和の振り返りを行い、その効果と副作用を整理しましょう。総裁交代後の2024年12月に多角的レビューとして日銀自身が振り返りを行っていますので、そちらを参照しています。
小演習として、デフレ脱却について考えます。すでに世の中はインフレが話題になっていますが、政府自身は「デフレ脱却」の旗を降ろしているわけではありません。これはなぜなのでしょうか。政府的なデフレ脱却の意味合いを考えましょう。
ここから、大規模金融緩和と財政規律の問題を考えます。日本は国債を増やしていますが、現在国債の半分を日銀が保有しています。結局日銀が買えばよいというのは財政ファイナンスの批判を受けるところで、財政的にも放漫財政につながるのでしょうか。国債の安定性については財政政策の範疇ですが、ここでは金融政策にかかわる点に触れておきましょう。
結局、財政悪化のリスクとは何なのかといえば、格付や為替といった外部評価が悪化することかもしれません。もし経済が一国の中で完全に閉じていれば自国通貨建ての国債をいくら発行しても問題ないかもしれませんが、外国との取引や格付け機関の評価があればそうはいきません。この点について皆さんも考えてみてください。
財政規律の観点で、有名なドーマーの条件を説明します。成長率と金利の大小、またプライマリーバランスの均衡という条件はどこから出てくるのか、財政の観点から金利にはどのような制約があるのか、またより広くは経済成長やインフレもなぜ財政的に重要かという点について考えていきましょう。
最後に、金融政策をめぐる様々な立場について概観します。大きくは主流派とリフレ派に分かれるといえますが、量的緩和がそれほどインフレ効果を生まなかったことから、単純なマネタリーベースを増やせばよいという考えは退潮しています。
ここでは、伝統的な主流派と、また伝統的なリフレ派について解説しています。
リフレ派の敗北を経て、マネタリーベースではなくマネーストックを直接増やせばよいという財政政策重視派について解説しています。
財政政策へと重点がシフトしていく中で、物価は財政が決めていくのだという理論を主張する論者も登場しました。いずれにせよ、マネーストックを直接調整することでインフレを実現していくという大きな主張の中でとらえていけばよいでしょう。
全体のまとめを行います。ここまで金融政策の内容・流れを押さえてこられてお疲れ様でした。実際の日本の経験を踏まえ、これからどうするのか私たちが判断していかなければなりません。お手軽な解決策はなく、過去の政策の結果も背負ったうえで未来を模索しなければいけないのです。ご自身なりの主張を持ち、根拠を示せるよう、是非このコースの内容を参考にしていただきたいと思います。お疲れ様でした!
1.【受講者の悩みや問題】
金利や為替動向、賃上げといったマクロ経済環境に興味があるが、断片的なニュースを聞くだけで全体像が分からない
インフレ目標やデフレ脱却という言葉は聞くが、それが経済全体や自社の経営とどのように関わっているのか分からない
大規模な金融緩和を経て、今「金利のある世界」に入ったというが、今後どうなっていくかの予測を立てたい
個人の住宅ローンや会社の借入金利などがどうなっていくのか、自分自身で理解したい
日本経済全体や賃上げの動向について、幅広く深掘りしたい
そんなあなたのために、このコースを作りました!
2.【このコースの特徴】
たった4時間半の動画コースで本格的に金融政策・マクロ経済の大きな枠組み(物価・為替・金利)を学ぶことができる。(本コースは日銀の審議委員に情報提供・政策提言も実施してきたプロのエコノミストと作成したものです)
→ 詳しくは補足事項をご参照ください
具体的なマクロ経済指標・データを見ながら、金融政策の枠組みや日米の現状について理解することができる
物価(インフレ/デフレ)の決まり方、為替の決まり方、金利の決まり方を体系的に理解できる
ある時点での日米の中央銀行総裁であればどうするかという演習があり、実践的に金融政策を考えることができる
日本の大規模金融緩和(アベノミクス、黒田総裁期の日銀)の経緯、手法、限界、副作用などを網羅的に理解できる
金融政策と財政の関係についても理解でき、現状どのような立場があるのかを整理できる
3.【カリキュラムの概要】
第0章:はじめに
第1章:金融政策の基本
(1)金融政策の目的 ~金利の調節による物価の安定
(2)物価は何で決まるか
(3)金利は何で決まるか
第2章:日本の金融政策と日銀
(1)金融政策の歴史と課題
(2)国の財政規律との関係
第3章:金融政策の流派
■ 補足事項
基本的に事例・データは2025年3月(コース作成時の最新情報)までのものを使っています
本コースの共同制作者:金堀徹氏
メガバンク入社後、エコノミストとして経営企画部経済調査室、資金証券部、在NY日本国総領事館への出向を経て、現在は大手金融会社に勤務
短期的な経済分析・予測のほか、経営層に対して中長期的な観点から提言等を実施。過去には日銀の審議委員に情報提供・政策提言も実施
マインドシーズHPにてレポートも執筆している