
コースの目的と全体像を確認します。また、コース成功の条件について、以下の点をお伝えします。
・楽しく取り組むこと
・「個人差も大きいが思考には傾向があること」を受け入れること
・悪用厳禁、より良いサービスや制度を作るための知恵とすること
まず分かりやすさの観点から事例を紹介しましょう。オーケストラのメンバー選定の手法と裁判官による仮釈放の判断のケースです。ともにとても興味深い事例ですが、今まであまり合理的な行動がとれていなかったのではないか?それは非常に単純なことで解消できるのではないか、ということが分かります。行動経済学とは何か、そういった人間の非合理性の中にも傾向が存在すること、それをベースに経済を考え直すとどうなるか、ということを考えていきましょう。
ダニエル・カーネマンの有名な著作『ファスト&スロー』のもとにもなっている二重システム理論を紹介します。早い思考と遅い思考の二つがあるという仮説ですが、今後の「思考の癖」を考える上での前提になってくる部分ですので、押さえておきましょう。
一方、もしよく考えたとしても、やはり私たちの思考には一定の偏りがあることが分かっています。完全に合理的に考えることは難しく、なぜかそう感じてします。第3章以降のテーマの前出しをします。
行動経済学は人間の思考の癖を明らかにするもので、制度設計にうまく使えば低コストで大きな効果を得ることができます。人間の癖をついた設計について「ナッジ」と呼びますが、その事例を紹介しておきましょう。
巷の行動経済学について学ぼうとすると、妙に分かりにくい、理解しづらさがあります。それはなぜか、そしてどのようにこのコースでは考えているかを整理しておきます。
ここからはまず、私たちは本当に自律的に、主体的に考え、合理的な選択(判断)をしているのかについて考えていきます。結果的に言えば、多くの判断について外部からの影響や自分自身の思い込み、また決定を誰かに委ねていることが分かっています。なかなか刺激的な内容ですが、ここからまず行動経済学の森に分け入っていきましょう。
事前の刺激によって、後の思考が影響されることをプライミングといいます。私たちは言葉と言葉をつなぐ連想の中で思考をしていきますから、ある刺激を受け取ると無意識にそれに引っ張られた思考になってしまうということです。思考の枠組みを決めてしまう重要な考え方ですので、必ず押さえておきましょう。
プライミングの一例としてザイアンス効果を考えましょう。広告やメルマガ、名刺のポスティングなど様々なところで活用できる手法です。
今まではすでに紐づいている連想を使ったプライミングを考えてきましたが、新しい紐づけを行うこともできるでしょう。もしそれがうまくいけば、あるものを見ると自動的に自社の製品・商品を連想させることができるはずです。マーケティングのポジショニングに近いですが、より広い概念として考えたいところです。
プライミングが何かを見せることで別のものを連想させることができるのであれば、「見せないこと」で連想させなくすることもできるはずです。自社の世界観を徹底したいとき、邪魔なものは排除しなければいけません。このことについてプライミングの観点から考えておきましょう。
次にヒューリスティック(思考の省略、近道)に入ります。まず代表性ヒューリスティックから始めましょう。あの人A型だよ、と聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか。代表例としての「まじめそう」といった印象が浮かぶのではないかと思いますが、本当にそうでしょうか。こうしたその集団内の目立つもの、代表例が起こる可能性が高そうだと考えることを代表性ヒューリスティックといいます。具体例を見ながらご自身はどう思うか、比べてみましょう。
この代表性ヒューリスティックを先読みに使うと、「この事象は○○のパターンの傾向かも」と考えて先んじて行動をとろうという発想になります。例えばリーマンショックなどは、そういった先読みを皆が行った結果として影響が大きくなってしまいました。こういった心理構造も押さえておきましょう。
代表性ヒューリスティックの一つのバリエーションとしてピーク・エンド効果が考えられます。過去の記憶を思い出すとき、ピークとエンドの印象が強く残るということです。これも営業その他にうまく取り入れられるはずです。
ここで代表性ヒューリスティックについてどのように活用するか、今までの映像を見たうえで考えてもらいます。今日からできる工夫もあると思いますので、数多く出してみましょう。
次に利用可能性ヒューリスティックについて考えます。記憶をベースに施行しているとすれば、やはりよく聞くワードやテーマについてはよく起こることと認識しやすいことになります。広告宣伝の基本的な根拠づけになるので、理解しやすいと思います。なお、ザイアンス効果は無意識に見ていても効果がありますが、利用可能性ヒューリスティックの場合は当然意識していなければ意味がありません。
HPVワクチン問題は典型的に利用可能性ヒューリスティックにより公衆衛生上の問題が起こってしまっている事例です。ファクトベースで考えれば陥らない考え方でも、基本的にファクトを確認することはあまりありませんから、メディアで報道されることが大きな影響を持ってしまいます。ご自身の思考についても確認しておきましょう。
ここで利用可能性ヒューリスティックに関して、SNSの影響を考えてみます。現代マーケティングで欠かせないSNSですが、思考にどのように影響していくでしょうか。是非皆さんも考えてみてください。
次に3番目として固着性ヒューリスティックと呼ばれるものを紹介します。一般的にはアンカリングという言葉の方が有名かもしれませんが、船の碇をおろして船の移動範囲を固定するように、相手の思考を一定の幅に押さえることができます。皆さん自身も経験しているはずですが、うまく使えば一瞬で大きく相手の認識を変えることができる手法ですので、色々なバリエーションを知りましょう。
次にいわゆる松竹梅効果と呼ばれる3つの中では真ん中を選びやすいという話をします。極端回避性とも言われますが、これも固着性ヒューリスティックの一つと言えるでしょう。皆さんの商品ラインナップもどんな3つを並べるかで利益率が大きく変わってくるはずです。
ここで固着性ヒューリスティックについても演習をしておきます。固着性ヒューリスティックは比較対象を操作することで何らかのイメージを作り上げることです。ユニクロが低価格・低品質というイメージを変えるにはどうすればよいでしょうか。ダイナミックなアンカリングの事例ですので、是非考えてみましょう。
ではこうしたヒューリスティックで考える顧客を振り向かせるにはどうすればよいでしょうか。また、自分自身がヒューリスティックに陥らないためにはどうすればよいでしょうか。ヒューリスティックは早い思考として便利ですが、冷静に考え直すことも大切です。思い込みの外し方も考えておきましょう。
ここからは3つ目、決定回避の考え方に入ります。そもそも私たちは何かをすべて積極的に決められるわけではありません。悩み、時には先送りしたり考えないことにしたりするのが普通の弱い人間です。そういう思考の癖について学びましょう。まずはジャムの法則からです。
自分で選べないときに何に従うのか、その一つが初期値です。最初の設定から変えるという積極的な行動をとることは勇気も労力もかかります。このデフォルト効果は難しいテーマにこそ有効な考え方ですので、うまく活用しましょう。
自律的決定の回避という意味で、権威への服従原理という重要な問題があります。これは権威や肩書きのある人の言うことを無条件に信じてしまう心理的効果ですが、その場になれば多くの人がそうなってしまうのではないでしょうか。よくマーケティングでは「権威」をうまく使うと信じてもらいやすいといった気軽な書き方がされていますが、もともとはより深刻な問題で、ナチスだけでなく最近の日大アメフト事件など、多くの事例に表れています。
権威への服従原理の一つのバリエーションとして、「何か凄そう」という雰囲気だけで信じてしまうという心理現象があります。ジンクピリチオンは化学物質の名前で、花王のメリーズに入れられました。この言い方は日本だけですので注意しましょう。
最後に同調効果を扱います。群れの原理とでもいえる同調効果は、ときに同調圧力として個々人の意見や思考を封殺してしまいます。なかなかそれにあらがうのは難しいですが、少なくともそういう傾向があることを知るのは大切です。「みんなが言ったから」で本当に決めてよいのか、是非考えてみましょう。
ここからは思考の癖を知るということで、利害得失に関する感じ方を扱うプロスペクト理論を見ていきます。まずはその理論の概要を押さえましょう。
プロスペクト理論は価値関数と確率荷重関数の2つからなります。ここでは確率を私たちがどう感じているか、確率加重関数について考えましょう。
価値関数の要素の一つ、参照点依存性について改めて考えます。固着性ヒューリスティックと同様の発想ですので、ヒューリスティックも復習しておきましょう。
次に損失回避性について深く見ていきましょう。損失と感じるか、得と感じるかで感情の揺さぶられ方が異なるということでしたが、とにかく私たちは損したくないものです。損失が確定するのも嫌います。しかし損も得も主観的な問題でもあり、言い方ひとつでどうとでもとらえられるのも事実でしょう。フレーミングの技術もここで学びましょう。
損失回避性の中でもサンクコストは厄介な問題です。損失を確定させたくないからこそ、ずるずると投資を続け、赤字を膨らませてしまうということは皆さんの周りにないでしょうか。有名な事例ではコンコルドがありますが、近年の日本でもMRJの開発は典型的な問題です。ご自身の判断においてもぜひ知っておいてほしい考え方です。
ではこの損失回避性をマーケティングに活かすとすればどうすればよいでしょうか。ここでは損失を強調する方法と、損失を排除する方法、2つ紹介します。
次に感応度低減性について振り返ります。感覚的には当たり前のこの性質ですが、価値関数をベースに考えるとリスク回避的・リスク愛好的な行動に影響することが分かります。特に損失局面においてどういう影響があるか、確認しましょう。
ここで参考までにオマキザルの実験でも人間と同じ行動をとるという話をします。損失回避などは動物的な本能に根差しているのです。
次に損失回避性が現状維持バイアスにつながるということを説明します。現状からの変更が「損失になる可能性」と感じられるのです。しかし、この現状維持バイアスにとらわれ続けると、どんどん私たちの世界は狭くなっていってしまいます。どうすれば克服できるのか、その方法をぜひ理解してください。
次に現在バイアスに移ります。異時点間の行動の違いに関する研究ですが、私たちは「今」に強い執着を示します。今もらえるもの、即時報酬に敏感なのです。長期的な報酬、メリットと今の欲望、それを天秤にかけて合理的な行動をとることができるか?自分の考え方の癖を押さえましょう。
有名なマシュマロテストを解説します。再実験の結果、解釈が変わっており、より貧困と現在バイアスの関係性を浮き彫りにしています。貧困に関する社会課題の解決などを目指している方は十分に理解する必要があります。
現在バイアスは抜けがたいですが、克服の方向性について説明します。
現在バイアスは組織にもあるということで、S.コヴィーの7つの習慣から「緊急性・重要性マトリックス」を例に演習を行います。
演習の解説です。
ここからは現在の経済学の外側である利他性について考えます。利他性と返報性は貨幣経済以前から存在する人間社会の根本的な要素です。
ユニクロやクラウドファンディングなどを例に利他性マーケティングについて解説します。
最近のSDGsやパーパス経営など、利他性がよりビジネスにって重要になっているという点を確認します。
利他性は重要な行動原理ながら、貨幣経済・市場経済とは相性が悪い部分があります。この部分を理解しながら、大きな意味でビジネスを成り立たせていく必要があります。
ここから実際に行動経済学をいかに実践に組み入れるか、ナッジについて考えていきます。
まずイメージとして、EASTというフレームワークを通じてナッジを考える演習を行います。ゴミ箱に上手く捨ててもらうにはどうすればよいか?が題材です。
演習に対する回答例です。
ナッジ設計についてのポイントを解説します。促進したい行動がどのような意識レベルのものなのかによって使う発想が異なりますので注意しましょう。
参考事例としてゲーミフィケーションのポイントと事例を解説します。
次に公共政策的なナッジではなく、マーケティングの中でどのように活かしていくかについて考えていきます。4Pの中で整理し直すとどのように見えるかも考えます。
商品設計について、いくつか効果のあるパッケージがありますので、ここで解説します。
商品設計におけるポイントの続きです。ここでは顧客との接触頻度が少ないケースについて解説します。
最近のデジタル化の中で、マーケティングの在り方も変わってきています。顧客体験(UX)において以下に満足度を上げるか、カスタマージャーニーをよく考えて設計していく必要があります。
行動経済学の知見を使う時の心得について改めて指摘しておきます。
全体のまとめです。行動経済学をしっかりと学ぶことは難しく、あまり機会がないと思います。その意味でこのコースを取られた方はある程度整理された形で理解ができていると思いますので、ぜひ他社に差をつける形で活用してほしいと思います。付加価値のある素晴らしい商品が正しく伝わるよう、今の時代の基本スキルとして腕を磨いていきましょう。
1.【受講者の悩みや問題】
折角商品や制度を作っても、消費者や利用者・社員が思った通りに反応してくれない
消費者に自社の商品やサービスをどのように伝えていけば上手く広がっていくか、よく分からない
行動経済学に興味があるが、どのように商品やサービスに組み込めばよいかイメージがつかない
最近の共感ビジネスに興味があるが、どういうポイントがあるか分からない
思考力について、どうも自分は事実に基づかずにイメージや直観で判断してしまいがちだ
そんなあなたのために、このコースを作りました!
2.【このコースの特徴】
しっかり4時間の動画コースで行動経済学の全体像をつかみ、シンプルに理解することができる(よくある「○○効果」の列挙ではなく、体系的に整理された形で行動経済学の考え方を理解する )。
行動経済学の知識ゼロから理解できる
ビジネスの状況に即した事例を豊富に取り入れ、理解しやすくする
単なる「ビジネステクニック」としての知識ではなく、自分の思考の癖を見直し、より良く考えるための刺激になる
3.【カリキュラムの概要】
第0章:はじめに
第1章:行動経済学とは何か
第2章:意思決定のカラクリ ~自律的選択は可能か
※第2章で「プライミング、ヒューリスティック、決定回避」を扱います
第3章:利害得失のココロ ~損失回避と現在バイアス
第4章:利他性と共感ビジネス
第5章:行動経済学の活用 ~ナッジとマーケティング
■ 補足事項
基本的に事例は2020年度(コース作成時の最新情報)までのものを使っています