
このコースでは「フィルターペインを徹底的に理解し、実務で自在に使いこなせるようになる」ことを目指します。タイトルにもあるとおり、フィルターを制する者はレポートを制します。
どんなにグラフやデザインがきれいでも、フィルターの仕組みを理解していなければ、正しい数字を出すことはできません。逆に言えば、フィルターをきちんと使い分けられれば、誰が見ても一貫性のある、信頼性の高いレポートを作ることができます。
(Udemyのレクチャー概要画面をみながら説明する)
このコースでは、まずフィルターペインの基本操作から始めて、ビジュアルレベル・ページレベル・レポートレベルといった適用範囲の違いを学びます。
そのうえで、スライサーとの違いやクロスフィルタリングとの関係を取り上げます。最後には、DAXを使った発展的なフィルター制御への橋渡しも行います。段階的に進めることで、なんとなく使っていたフィルターペインを体系的に理解できる構成にしています。
また、実務でよくある「あるある失敗」にも触れていきます。たとえば、二重にフィルターをかけてデータが消えてしまったといったケースです。こうした場面も、適切なフィルターへの理解があれば、冷静に対応できるようになります。
(テーブルビューをみながら)
ここでは、このコースで使う題材データについてもご紹介しておきましょう。今回用意したのは、あるIT機器販売会社の売上データです。3つのテーブルで構成されています。
まず「Customers」には顧客ID、顧客名、地域、市区町村、そしてセグメントが入っています。地域や市区町村は顧客の所在地です。セグメントの「エンタープライズ」「SMB」といった区分は顧客の種類を表しています。SMBとは中小企業、エンタープライズとは大企業のことです。
次に「Products」には製品ID、製品名、カテゴリが入っています。たとえば「Power BI Pro」というソフトウェアや、「Surface Laptop」といったハードウェア、「Azure Support」のようなサービスが含まれています。
最後に「Sales」には、取引ID、注文日、顧客ID、製品ID、数量、単価、金額、そして販売時点のカテゴリが入っています。ちなみに、ここでのカテゴリは「Productsテーブルにあるカテゴリ」と同じです。
(モデルビューを開いて関係を表示)
このように、顧客・製品・売上の3つのテーブルをリレーションで組み合わせて演習を行っていきます。SalesとProductsは、製品IDにて。Customersとは、顧客IDとリレーションを組んでいます。
このコースは、基本的に、見ていただくだけでOKです。一応、参考のために、このレクチャーのダウンロードにcsv データを置きました。
お手元で一緒にデータを読み込み、操作しながら進めていただいても構いません。Power Query Editorでの加工は不要です。Sales クエリと、Products、そしてCustomersをそれぞれのIDでリレーションを組んでいただければと思います。
以上、このレクチャーでは、このコースの概要と使用するデータの紹介を行いました。次のレクチャーからは、さっそくフィルターペインの基本操作の説明に入っていきます。
このレクチャーからは、Power BI のフィルターペインについて詳しく見ていきます。
みなさんおなじみのこのウィンドウのことです。私は自分のコースではより一般的な「ウィンドウ」と呼んでいますが、ここでの正しい呼び方は「ペイン」です。このコースでは、統一して「フィルターペイン」と呼んでいこうと思います。
さて、フィルターペインは、レポート利用者がデータをより早く、そして正確に絞り込むためにとても有効な機能です。
このレクチャーでは、基本的なフィルターと、より柔軟に条件を指定できるアドバンスフィルターのうち、まずは基本フィルターを取り上げます。対象はテキストデータと数値データです。
(ビジュアルが再現できるようにすべてのペインを開く)
ここにカテゴリ別の販売数量を表示した集合横棒グラフがあります。このシンプルなビジュアルを使って説明していきましょう。説明のために、データラベルをオンにしています。
まずはフィルターの基本からです。フィルターペインを開くと、このビジュアルで利用できるフィルター項目の候補が出されます。デフォルトでは、このビジュアルのX軸やY軸に入っているフィールドが表示されます。
カテゴリの下向き矢印をクリックすると、基本フィルターが出てきます。カテゴリの値を1つ、もしくは複数選択することができます。(実演する)これは、スライサーにカテゴリを置いたときと同じ動きです。
(スライサーはそのまま)
なお、この基本フィルターの選択肢の横に出る数字。これは何でしょうか?これはその項目の中にそれぞれの選択肢のデータが何個あるか?を示しています。例えば、ここでは、カテゴリのデータの中にサービスが3。ソフトウェアが4つ。そしてハードウェアが3つあるという意味です。
テーブルビューで見てみましょう。Productsのところにいきます。ソフトウェアは4つ。ハードウェアは3つ。そしてサービスは3つありますね。では、レポートビューに戻ります。
次に数量を見てみましょう。カテゴリとは違った見え方をします。基本フィルターというドロップダウンはなく、最初から「次の値のときに項目を表示」と出て、その条件を指定できるようになっています。例えば「次の値より小さい」などを選び、さらにドロップダウンを開くと、「より大きい」「以上」「イコール」「ノットイコール」などの選択肢が並びます。数値の場合は、こうした細かい条件式の指定ができます。
さらに下を見ると、AND と OR の選択肢が出てきます。条件を2つ設定した場合、AND を選べば両方の条件を満たしたデータだけが残り、OR を選べばどちらかを満たしたデータが残ります。例えば「200以上かつ240以下」と条件を設定し、(フィルターを適用)を押すと、条件に合った「ハードウェア」だけが残りました。他のカテゴリは条件外だったため消えたわけです。(Ctrl + Z で元に戻します)
ここでポイントです。なぜカテゴリと数量では見え方が違うのでしょうか?
これは対象のフィールドがテキストデータなのか、数値データなのかの違いです。
テキストの場合、基本フィルターでは「選ぶだけ」。この動きはスライサーと同じです。一方、数値の場合は「条件指定」ができ、さらに AND / OR を組み合わせて範囲指定も可能です。
ここでよくある失敗を紹介しておきます。数値のフィルターで、条件を設定したのにデータが表示されない、というケースです。
これは多くの場合、AND 条件で「ありえない組み合わせ」を作ってしまっていることが原因です。たとえば「200以上かつ100以下」のように、数学的に両方を同時に満たせない条件を設定してしまうと、結果は空になります。残念ながらこうしたあり得ない組み合わせに対して、Power BIはエラーメッセージを出してくれません。
こうしたときは条件の整合性を見直したり、OR 条件に切り替えると解決します(ORにして適用するとビジュアルが出る)。先ほどのANDに当てはまる条件はありませんが、ORならば、対象はありますね。
実務でもよく起きる“あるある”ですので、覚えておくと安心です。
フィルターを消すためには、御覧の消しゴムのアイコンをクリックします。するとフィルターが外れます。
まずはこれがフィルターペインの基本です。
以上、このレクチャーでは、基本フィルターについて、テキストと数値の違いを紹介しました。
次のレクチャーでは、日付データにおける基本フィルターを取り上げます。
前のレクチャーでは、フィルターペインの基本フィルターのうち、対象データが数値やテキストの場合を見てきました。
このレクチャーでは、対象が日付データの場合について説明していきます。
ここでは、数量を日付データで表示した折れ線グラフを用意しています。
今御覧のビジュアルは作ってそのままなんですが、X軸を御覧ください。Power BI が日付データを自動で階層化しました。今回のデータは2024年と2025年の2年分しかありませんので、最上位の「年」の階層で表示され、折れ線グラフには2点だけが出ています。
フィルターペインを見てみましょう。ここでも、日付に関する選択項目が、自動で作成された階層ごとに分かれて表示されています。
ただし、こうした自動階層が不要な場合もありますよね。そのときは、(X軸のフィールドで「日付階層」ではなく「注文日」を選択)してください。すると、フィルター項目も「注文日」だけに切り替わります。
つまり、日付フィルターでは「自動階層を使うか/使わないか」によって、フィルターの選択肢が変わります。注文日の場合、基本フィルターでは、存在する日付ごとにチェックボックスが出てくる形です。
1日単位や数日単位で選ぶなら有効ですが、実務では「もっと大きな単位で期間を絞る」ことの方が多いと思います。その時、じゃあってことで、1日単位でチェックしていって、期間をフィルターするのは現実的ではないですよね。
次に、X軸を再び日付階層に戻してみましょう。一番粒度の荒い「年」から順に見ていきます。
「年」を展開すると、デフォルトでは高度なフィルターになっていますが、基本に切り替えるとチェックボックスで選択できます。さすがに年単位なら、大きくフィルターをかけたいケースは実務でもありますね。
次に「四半期」。こちらも基本フィルターではチェックボックスが出て、簡単に選択できます。第一四半期で選択した時、今、2024年の数値は2024年の第一四半期だけが出ています。2025年も2025年の第一四半期だけでフィルターされています。消しゴムアイコンでフィルターを消します。
月も同じく基本フィルターでチェックボックスが出ます。最後に「日」では、デフォルトは高度なフィルターですが、基本に切り替えれば1日ごとにチェックボックスで指定できます。これは、(X軸にて注文日に切り替える)日付の階層にせず、注文日にした場合の基本フィルターとは似ていますが違います。こちらは何年何月何日といった具合に特定の一日が決まります。
しかし、(階層に戻し、日の基本フィルターをみる)こちらの階層の日における基本フィルターは日にちだけです。ここでの1日は、何月に限らずとにかく1日を表します。こうした違いがあります。
ここまで見てきたように、日付データの基本フィルターは、動きとしてはテキストデータのフィルターと似ています。
1つずつ選んでチェックを入れる方法です。ただ、実務では日付は「範囲指定」で使うことが多く、その場合はフィルターペインよりも(実演する)こんな感じで、スライサーを使った方が便利ですよね。
そのため、日単位でフィルターペインを使う機会はあまり多くありません。一方で、年や四半期といった粒度の荒い単位では、利用頻度は高くなります。というのも、特に四半期だけの選択ってスライサーではできません。今、第一四半期でフィルターをかけました。こうして出たビジュアルは2024年と2025年の第一四半期だけを表示しています。こういうデータ抽出は、スライサーにはできません。(フィルターをクリアする)
とはいえ、それでも操作のしやすさから、日付データをフィルターかける時、スライサーを使われる方の方が多いのかなぁと思います。
以上、このレクチャーでは、フィルターペインの基本フィルターのうち、日付データを扱う場合について解説しました。次のレクチャーでは、アドバンスフィルターを取り上げます。
このレクチャーからは、アドバンスフィルターを見ていきます。ここでは、フィルター対象がテキストの場合について説明します。
今見ているのは、集合横棒グラフで、X軸には数量。Y軸には顧客名を入れています。
前のレクチャーでも触れましたが、フィルターペインの見え方はデータ型によって変わります。文字列か、数値か。その違いをまず押さえておきましょう。
ビジュアルをクリックして、フィルターペインを見てみます。カテゴリのフィルターを見てみましょう。テキストの場合、フィルターの種類は、基本フィルターのほかに「高度なフィルター処理」と「上位 N」という選択肢があります。これらを総称して、アドバンスフィルターと呼びます。
ビジュアルをみますと、顧客名は英語で表示されています。フィルターペインで「顧客名」を開き、フィルターの種類を「高度なフィルター処理」に切り替えましょう。
すると、条件を入力できる画面に切り替わります。実はこれは、数量のデフォルト設定ととても似ています。つまり「高度な」といっても特別に難しいものではなく、数値でやっていたことをテキストに応用するだけです。
数値の場合に「大きい」「小さい」といった選択肢があったように、テキストには「含む」「含まない」「で始まる」「で終わる」といった条件があります。
例えば「COを含む」と入力して(適用ボタンをクリック)すると、「Contoso」など CO を含む顧客名だけが残ります。文字列検索ができるのがアドバンスフィルターの強みです。たまに、AND、ORがあって次に空欄があるから、空欄埋めないとフィルターかけられないのでは?と思う人がいますが、ここは空欄でもOKです。また、エンターしてフィルターかからない!という人もいますが、チェックボックスと違って、適用というボタンを押さないと適用されません。
では、消しゴムアイコンでいったんフィルターを消します。
条件を複数組み合わせることも可能です。「顧客名が L で始まる」または「F で始まる」という条件を「OR」で指定すれば、LかFで始まる顧客が表示されます。実行すると、数社が対象として残りました。
一方で「AND」を選ぶとどうなるでしょうか? 両方の条件を同時に満たす必要があるため、結果は空になります。最初の一文字がLであり、同時にFであることは不可能だからです。
このあたり、論理的に不可能なものは、エラーメッセージが出ても良さそうですが、そこまでPower BIは優しくないです。
このように、実務でよくある失敗が、条件の矛盾によってデータが出なくなるケースです。フィルターをかけた途端に「データが消えた!」というときは、条件がANDやORを確認して、矛盾した組み合わせにしていないか確認していただければと思います。
では、消しゴムアイコンでまたフィルターを消します。
次に「上位 N」を紹介します。これはランキング形式でデータを絞り込む機能です。
例えば顧客を対象にして、数量を基準に「上位5」を指定すると、出荷数量の多い顧客トップ5だけを残すことができます。(値の欄に数量を入れて、適用をクリック)すると、トップ5の顧客だけが表示されました。
最下位を見たい場合は「上」を「下」に変えると、ボトム5の顧客が出せます。上位顧客の分析、不振顧客の特定、いずれにも使える便利な機能です。
ここでもよくある失敗があります。個人的にはこれを実務でプレゼンの場とかでやって非常にきまづかった思い出があります。それは「ランキングの基準を取り違える」ことです。例えば、ビジュアルは「数量」を表示しているのに、上位Nの基準を「売上金額」にしてしまった場合です。やってみましょう。一旦数量で、上位Nでトップ5位を出します。そしてこのスクショを撮ります。
そして、今度は、値のところに数量ではなく、売上を示す「金額」を入れます。そして適用します。微妙に変わりましたね。スクショで撮ったものを並べてみます(右におく)
この場合、どちらもタイトルが示す「数量のグラフ」です。左は売上によるトップ5、右は数量によるトップ5という異なる基準で並んでしまいます。結果、上位2位までは同じでも、3位以下が全く異なるという状況が発生します。それに当たり前ですが、この左側のビジュアルをもって「これが出荷数量によるトップ5企業です!」なんていうと嘘になります。だってこれは「売上で見た時のトップ5企業の数量」を示しているだけですので。
もちろん、意図的に「数量のビジュアルで金額の上位を出す」という分析もできますが、ほとんどのケースでは誤解を招きます。ですので、上位Nを使う際は「基準値に何を設定しているか」を必ず確認することが重要です。では、消しゴムアイコンでフィルターを解除しておきます。
以上、このレクチャーでは、テキストと数値を対象にしたアドバンスフィルターを紹介しました。基本フィルターではできない「文字列検索」「条件の組み合わせ」「ランキングによる抽出」が可能になります。
次のレクチャーでは、アドバンスフィルターのうち日付データを対象にした場合を見ていきましょう。
このレクチャーでは、アドバンスフィルターで日付を対象とする場合について見ていきます。
ポイントは、前のレクチャーで扱ったテキストや数値の場合と同じ点、そして異なる点に注目することです。結論から言うと、日付フィルターの方ができることが多いです。
販売量を注文日で表示した折れ線グラフを用意しています。X軸を「日付階層」ではなく「注文日」に設定しています。
フィルターペインを確認すると、選べる種類として「基本フィルター」「高度なフィルター」「相対日付」「相対時間」「上位N」があります。
高度なフィルターと上位Nは、テキストや数値の場合とほぼ同じです。ただし、基準が日付や時間になる点が異なります。「指定の日付である」「指定の日付ではない」「この日より前」「この日より後」といった条件を細かく設定できます。上位Nは、テキストの場合と全く同じですね。
日付フィルターで独特なのが「相対日付」と「相対時間」です。仕組みは同じなので、ここでは日付で説明します。
相対日付を選ぶと、今日を基準にして「過去何日分のデータを見るか」を動的に設定できます。例えば「最近の300日」と設定して適用すると、今日からさかのぼった300日間のデータだけを表示できます。
この設定は、レポートを開いたその時点を基準に計算されます。つまり、一週間後に同じレポートを開けば、その日を基準に「最近の300日」が表示されます。さかのぼる単位は、日・週・月・年などから選べます。
チェックボックスで「今日を含めるかどうか」も調整できます。
過去の日付ばかりではなく、未来の日付でも使えます。その時は「次の〇日」とすれば未来の日付も扱えますので、売上予測や計画データを扱うときに使えますね。
相対時間を選べば、同じ要領で「過去何時間」「過去何分」といった時間単位でのフィルタリングが可能です。これはリアルタイムにデータが更新される環境で特に役立ちます。
これらの相対日付は、実務で、例えば、小売店の売上レポートで「直近30日の売上推移」を見たいときには、相対日付が非常に便利です。毎日データが更新されても、常に直近30日分だけを自動で表示してくれます。
一方、工場のセンサーやシステムログといった24時間稼働していて、常にデータを出し続けているような場合には「直近12時間」や「直近60分」といった相対時間フィルターを使うことで、異常値の検知や稼働状況の分析がしやすくなりますね。
相対日付を使うときに多いのが「日付が表示されない」という失敗です。たとえば、今見ているデータは、2025年の8月しかデータはありません。そして、今は、2025年の9月です。それなのに「直近7日」と設定すると、当然データはゼロ件になります。
実際にこういうことがあると焦っちゃいますが、原因はデータの期間と相対日付の条件が合っていないだけなので、慌てず確認しましょう。
笑い話ですが、私の知り合いが機械のメンテナンスで相対時間フィルターで過去60分で設定しました。機械からタイムリーにデータが飛ぶようにしていたので、それで機械のデータをモニターするためです。でも、全然Power BIにビジュアルが表示されてません。ちょうどさっきこのビジュアルで過去7日で出したような状態です。
結果的には、設定として機械からデータを飛ばす設定が都度データを送るのではなく、バッチで送るような設定だったそうです。そのバッチのタイミングがちょうど、過去60分と重ならないデータが飛ぶような設定になっていたので、相対時間フィルターではデータが出てこなかったというわけです。もちろん原因が分かったので、すぐ直したわけですが、テストの時に、待てど暮らせどデータ出てこなかった
正確には着ていたけど、相対時間フィルターで表示されていなかった時には焦ってしまい、すぐには原因に気づけなかったそうです。私はあまりないですが、タイムリーなデータを扱う時に、こういうトラブルは焦りますよね。
この話の教訓としては相対日付や相対時間を使う時には、きちんと対応するデータがPower BIに読み込まれるようになっているのかを確認するとよいです。
以上、このレクチャーでは、日付データに対するアドバンスフィルターを見てきました。
ここまでで「ビジュアルに対するフィルター」を中心に紹介しましたが、実はフィルターの適用範囲はビジュアルに限りません。
次のレクチャーでは、フィルターの適用対象をページやレポート全体に広げていきたいと思います。
このレクチャーでは、Power BI のフィルターペインをさらに深掘りして、三つの階層での使い方を整理していきます。フィルターには、ビジュアル単位、ページ単位、そしてレポート全体にかかるものがあり、それぞれ役割と使いどころが異なります。実務でフィルターを利用するときには、この違いを理解しておくことが非常に重要です。
まずは、最も小さな単位である「ビジュアルレベルのフィルター」です。今、画面左側には、金額を四半期ごとに表示している棒グラフがあります。
このとき、第一四半期だけを表示するように設定すると、そのチャートだけがフィルタリングされます。年度が違う四半期で比較しようとすると、こうすると見やすいですね。
数値や日付の条件を細かく指定することもでき、数値でフィルターを利用すれば「売上が10万円以上」といった柔軟な設定も可能です。このフィルターは、そのビジュアルに限定して働くため、他のグラフには影響を与えません。さきほど四半期で区切ったり、年度で区切っても、横のグラフには影響ありませんでしたね。
この辺りは、前のレクチャーで説明した基本フィルター、アドバンスフィルターの領域です。
次に「ページレベルのフィルター」です。このフィルターペイン、デフォルトですと、どの階層も同じ色と文字で表示されるため、ぱっと見て違いがわかりにくいですよね。ページレベルフィルターはここです。
ここに条件を設定すると、そのページに配置されているすべてのビジュアルに同じフィルターがかかります。
今、右側のグラフは金額とカテゴリで作った棒グラフです。
ページ内に複数のチャートが並んでいます。左側は、四半期毎のの売上、右はカテゴリ毎の売上です。このとき、ページレベルのフィルターにカテゴリをもってきまして、「カテゴリ=ハードウェア」と設定すると、ページ内のすべてのチャートがハードウェアだけに絞られたデータを表示します。右側はもともとカテゴリ毎のグラフなので、ハードウェアでフィルターされたことが分かります。
左側にはもともとハードウェアという表示なく、全体のビジュアルでした。今は、外身には見えませんが、これはハードウェアだけの四半期毎の棒グラフになっています。
さて、ここで一つ棒グラフを新規で作ります。今度は数量をY軸に入れます。そして、X軸にカテゴリを入れます。すると、御覧のように新規で作ったものもいきなりハードウェアでフィルターかけられていますね。
これは、このページフィルターをかけているからです。一つ知っておいていただきたいのは、ページフィルターをかけた後では、たとえ新規でビジュアルを置いたとしても、追加されたビジュアルは自動的に同じフィルター条件が反映されるという点です。
ここで実務でよくある失敗と回避策の紹介です。
ページフィルターがかかっていることを忘れて分析してしまう、というのは実務で非常に多いです。特にフィルターペインをこんな感じで閉じてしまっていると気づきにくく、「なんか数値がおかしいな」と思ったらページフィルターが残っていた、という経験は私自身も何度もあります。共有されたファイルに前の人のフィルターが残っているケースも要注意です。
分析で一時的にフィルターをかけるならば、解除すべきですが、もし、固定的にページフィルターをつけたい時もあります。
その時のベストプラクティスは、ページ名に条件を入れておくことです。たとえばページ名を「カテゴリ:ハードウェア」としておけば、「あ、このページはそういう前提なんだ」と気づきやすくなります。
そして最後に「レポートレベルのフィルター」「すべてのページのフィルター」とわかりやすい名前になっています。です。一旦ページレベルフィルターをクリアします。
ここで条件を入れると、レポート内のすべてのページ、すべてのビジュアルに影響します。たとえば、レポート全体でカテゴリを「ソフトウェア」と設定すれば、どのページに移動しても表示されるのはソフトウェアのデータだけになります。つまり、レポート全体に共通する基準や条件を仕込みたいときに役立ちます。
やってみましょう。すべてのページでのフィルターにカテゴリを入れます。
で、こちらをクリックする前に、Lec2のページを見てみます。ここはカテゴリと数量を横棒グラフにしていますね。今は、全カテゴリが出ています。
では、ページ Lec6に戻ります。そして、すぺてのページでのフィルターで、ソフトウェアをクリックします。すると、当然このページはソフトウェアに変わりました。今、他のページもすべて、ソフトウェアでフィルターされています。ただ、明示的にカテゴリでビジュアル作っていないとかかっているかどうかわかりづらいですね。唯一の手がかりは、このフィルターペインの表示です。
ただ、Lec2のページはもともとカテゴリでのビジュアルでした。ソフトウェアだけにフィルターかけられているのがよく分かります。
Lec6に戻ります。途中みてきたように、レポートレベルフィルターはページフィルター以上に気づきにくいです。さらに注意なのが、ページを複製したら、同じ条件が新しいページに引き継がれるます。
やってみます。まだわかりやすいのは、もともとカテゴリのビジュアルがある場合です。Lec6を複製します。カテゴリがソフトウェアだけなので、まだフィルターかかっているか?と気づくきっかけになります。
でも、御覧ください。Lec4。これは顧客名と数量のビジュアルです。これはを複製します。フィルターペインを閉じます。これだけみて、カテゴリでフィルターかかっていることが分かる人はいないでしょう。よっぽど勘がいいです。実務だと、ページフィルターをかけた本人だって後になって忘れる人もいます。まあ、私なんですが。
もしレポート全体を特定カテゴリに固定するなら、ファイル名に条件を入れるのがおすすめです。たとえば「売上レポート_ソフトウェア限定.pbix」としておけば、受け取った人もすぐに理解できます。
また、本当に全体を特定カテゴリだけで分析するなら、Power Query Editorの段階でデータを絞ってしまう方が効率的です。わざわざ全データを読み込んでからレポートレベルフィルターをかけるのは非効率になる場合があります。
では、これらの複製は削除しておきます。またレポートレベルフィルターも外します。この消しゴムアイコンです。
まとめます。ビジュアルペイン。のっぺり白地で、階層になっているのが見えにくいのですが、それぞれで影響する範囲が大きくことなります。
ビジュアルフィルターは、ビジュアル単位にのみ及ぶ。そのため、細かい分析に便利
ページフィルターは特定条件に特化した分析ページを作るのに便利。この時、ページ名に条件を入れるのがベストプラクティスです。
そして、レポートフィルターは全体の条件統一に有効。ただし注意が必要で、可能ならPower Query Editorを使って、データ読み込み時に限定するのも一案です。
実務では、この違いを理解し、適切に使い分けることで、分析や共有の際の混乱を防ぐことができます。
以上、このレクチャーでは、フィルターペインの三つの階層での使い方を紹介しました。
一旦、ここまでで、フィルターペイン単独の説明を行いました。ここからはフィルターペインと似た動きをする機能をみて、対比させつつフィルターペインを深堀ります。
次のレクチャーでは、同じフィルター機能であるフィルターペインとスライサーの違いと、その使い分けについて説明します。
このレクチャーでは、フィルターペインとスライサーの違いを深掘りしながら、どういう場面で使い分けるべきかを解説します。両者は同じ「フィルター機能」ですが、役割や体験が大きく異なります。キーワードは、「誰が使うか?」です。
まず、フィルターペインについてみていきましょう。フィルターペインはレポートの右側にあり、レポートの製作者、つまりみなさんがフィルターの条件を仕込む場所です。
ここで設定された条件は、レポートを開いたときに常に適用されるため、ユーザーは特に操作をしなくても同じ条件でデータを見ることができます。たとえばビジュアルフィルターにカテゴリを追加して「常にある特定のカテゴリのデータだけを表示する」とか表示されている顧客名「顧客リストから特定の取引先を除外する」といった細かい条件を仕込むことが可能です。
また、スライサーとの対比で言えば、直前のレクチャーでみましたように、フィルターペインは、ビジュアルレベル、ページレベル、そしてレポートレベルの3層でフィルターかけられますね。
フィルターペインはレポートの「設計」に組み込まれるフィルターであり、そのレポートには作成者の意図が込められています。
一方で、スライサーはレポートキャンバス上に配置され、ユーザーが直接操作できるフィルターです。(スライサーで、製品名と地域を出す)
ユーザーはドロップダウンから地域を選んだり、リスト形式で複数選択したりできます。たとえばPower BIファイルを使った会議で「今期の売上を商品別に切り替えて見たい」と言われたとき、スライサーがあればその場ですぐ条件を変えられます。
また、スライサーが置かれていること自体が、「この条件で切り替えられるんだな」というヒントを会議参加者に与えます。今、製品名と地域、そして年でスライサー出してますが、これを見た人は、ああ、少なくともこの3つはフィルターかけられそうだなって思いますよね。
以上がフィルターペインとスライサーの機能的な説明です。
両者の違いを整理すると、フィルターペインは「裏側にあり、ユーザーが普段意識しない」存在。あくまで作成者が仕込む固定的な条件です。ユーザーといった時はみなさん自身のみではなく、みなさんが作成したPower BIレポートを使う人たちのことも含みます。
一方でスライサーは「見える場所にあり、誰でも触れる」存在で、ユーザーにとって操作性の高いインターフェースです。
例えば、この会社が製品カテゴリ毎で、部署が分かれているとします。この時に、部署別売上レポートを作るとき、部署の誰が開いても必ず同じ条件で見せたいなら、フィルターペインを使います。たとえば「年度=2025年」「カテゴリ=ハードウェア」とレポートレベルフィルターで設定しておけば、そのレポートを受け取った全員が同じ前提でレポートを見られます。
一方、会議や現場では柔軟性が必要です。「地域別で見たい」と言われたとき、フィルターペインをいじるのは不便ですよね。スライサーを置いておけば、ユーザーが自分で切り替えられます。まあ、スライサーあるんだから、「見たいならスライサーで自分で切り替えてください」と言いたいところですけど。
こうして、使い分けのポイントをお話したわけですが、ここで注意すべき点があります。たとえばフィルターペインのページフィルタで「注文日=2024/12/31より後」つまり、2025年と固定しているのに、(スライサーで年単位を作る)スライサーで「2024」を選ぶと、条件が競合してデータが表示されません。
(フィルターペインを閉じる)
これは裏でフィルターペインが効いているからですが、ユーザーには見えません。ユーザーは「なんでデータが出ないの?」と戸惑ってしまうのです。フィルターペインが閉じていれば尚更ですが、たとえ開いていても、Power BIに詳しくなければ、これみても何が悪いのか、なかなか気づけないのが現実と思います。
こういう場合のベストプラクティスは、重要な条件、この場合は、日付ですが、これはフィルターペインではなく、スライサーに出す。ないし、この辺りに注意書きの説明文として、「このレポートは2024年度限定です」と明記することです。こうすればユーザーの混乱を防げます。
以上、このレクチャーでは、フィルターペインとスライサーの違いをみていきました。
フィルターペインは「作成者が仕込む固定的な条件」です。誰が開いてもフィルターがかけられているので、再現性と一貫性が強みです。一方、
スライサーは「ユーザーが操作する条件」です。=操作性と柔軟性が強みです。プレゼンや打合せの場ではこちらの方が活躍する機会が多いと思います。
この違いを理解し、ユーザーが混乱せずに両者を使い分けられるようにすることが、レポート作成者の腕の見せ所です。
次のレクチャーでは、さらに一歩進んで「スライサーの同期」について見ていきます。
このレクチャーでは、Power BI の 同期のスライサー機能について解説します。複数ページにまたがるレポートで一貫したフィルター操作を実現するために、この機能は非常に役立ちます。前のレクチャーにて、レポートレベル、すべてのページのフィルターをやりましたね。
それにもう少し柔軟性をもたせたのがスライサーの同期です。
今見ているPower BI レポートのように、ページが複数あり、ページ毎に分析の切り口が変わるとします。
で、この時、みなさんはハードウェアカテゴリの担当者です。ハードウェアカテゴリの担当者は自分の担当のカテゴリだけを見たいとします。まあ、当然ですよね。このとき、各ページごとにスライサーでカテゴリを選び直すのは面倒です。
そこで登場するのがスライサーの同期です。あるページで1 でカテゴリ「ハードウェア」と選択すると、他のページに置いてある同期しているスライサーも自動的に「ハードウェア」で絞り込まれるようになるというものです。
では、実際に作ってみます。今、3つのページがあります。
1ページ目は、製品名による売上を横棒グラフで。
2ページ目は、地域による売上を棒グラフで。
そして3ページ目は、セグメント、これは製品ではなく、顧客の方ですね。顧客セグメントによる売上が入っています。
ページ1に、製品セグメントのスライサーを作ります。これは普通です。
ここからスライサーの同期です。
このスライサーをコピーして、次のページに貼り付けます。すると「スライサーの同期」というウィンドウが出ます。 スライサーの同期をクリックします。ちなみに、もし同期しないと。単にこのページでスライサーを1から作ったのとなんら変わりません。
では、同期したスライサー。今、ページ2にいるわけですが、ここでサービスを選択します。当然このページはスライサーがかかります。同期しているスライサーがあるページ1にいきます。御覧ください。このページのスライサーもサービスになっています。今度はこっちでハードウェアにします。
ページ2にいくとやっぱりハードウェアになっています。このように、同期は双方向に働きます。
さて、ページ3にいきます。ここにはまだスライサーはないですね。ここにカテゴリでスライサーを作ります。で、ソフトウェアにします。当然このページのビジュアルは変わりました。ページ1と2に行っています。こっちはハードウェアのままです。同期していないから当たり前ですよね。(ページ1にて)
この時、同期しているスライサーとしていないスライサー。どう見分ければよいのでしょうか?
表示のリボンの一番右側に、スライサーの同期というものがあります。これをクリックします。
何も出てません。スライサーをクリックします。すると御覧のようなチェックボックスから成る表がでてきました
これは、同期されているかを矢印アイコンがぐるぐるまわるアイコンで表現。そのスライサーが表示されているか、それてとも非表示になっているかを目のアイコンで確認できます。
これまで説明の便宜上、ページ1、2、3と呼んでいましたが正式には、ページLec8-1、8-2、8-3です。
ここで、見るとPage 1と2は同期しているけれど、Page 3はしていない、といった状況が一目でわかります。
ここで新しくチェックを入れればPage 3も同期対象になりますし、逆に外せば同期をやめられます。ページ3にチェックをいれます。そして、ページ3でソフトウェアを選びます。ページ1も2もソフトウェアになっています。今度はページ1で、サービスとしてページ3をみると、やっぱり同期されています。
(ページ3にて)
さて、こっちの目玉アイコンの列。これは、目のアイコンをオフにするとスライサー自体は非表示になりますが、条件は裏で効いたままになります。今、このページ3と呼んでいるLec8-3にいます。そして、今、ハードウェアで選択しています。これで目玉アイコンをオフにします。すると見えなくなりました。でも、削除したわけではないです。しかも、ハードウェアで設定しているスライサーも活きています。
試しに、ページ2にいきます。ソフトウェアを選択します。そして、ページ3を表示にします。そしてページ3に行ってみると、スライサーが表示になっていますし、スライサーもソフトウェアになっています
これは「最初のページで設定した条件を、他のページでも効かせたいけど、スライサーは見せたくない」というときに便利です。注意なのは、非表示にしたら、透明になっているとかじゃないので、元にあった場所をクリックしても何もおきません。しかも、スライサーの同期ペインもブランクになります。
ですので、この状態からまた表示しようと思ったら、同期しているスライサーがあるページにいって、そこから設定するしかないです。では、またページ3を表示させます。
さて、こうして便利なスライサーの同期ですが、同期できるのは「同じフィールド、項目ですね、これを使ったスライサー」に限られます。カテゴリのスライサーと製品名のスライサーを同期させることはできません。
今、製品IDでスライサーを作りました。同じページにある、このカテゴリのスライサーとは異なる項目のスライサーですので、この2つを同期することはできません。
で、今、他のページには、この製品IDによるスライサーはありません。でも、このチェックボックスはチェックすることができます。今、ページ2はこの2つのビジュアルしかないです。この状態で、製品IDのスライサーにて、ページ2の目玉アイコンをクリックすると、同時に同期でもチェックつきました。
ページ2にいくと、さきほどまではなかった製品IDのスライサー勝手に作られてますので注意です。
このあとやりがちなのは、間違えたってことで、非表示にすることです。
非表示にするだけでは削除されないので、不要なら削除する必要があります。
最後。このスライサーの同期は、ある意味フィルターペインのレポートレベルフィルターと似ています。レポート全体で一貫した条件を設定できるからです。
ただし違いは、「同期スライサーはページごとに見せる・見せないを調整できる」点です。レポートレベルフィルターが一律に全ページへ強制されるのに対し、同期スライサーは柔軟に制御できます。
以上、このレクチャーでは、スライサーの同期を紹介しました。
次のレクチャーでは、フィルターペインとクロスフィルタリングの違いについて見ていきます。
クロスフィルタリングとフィルターペインの違い
このレクチャーでは、Power BI でよく混同される「クロスフィルタリング」と、フィルターペインによるフィルターの違いについて整理します。両者は一見似ていますが、役割と性質がまったく異なります。
前のレクチャーで、みなさんはすでにスライサーとフィルターペインの違いを学びましたね。その関係に少し似ています。
まず、クロスフィルタリングについてです。たとえば棒グラフのあるカテゴリをクリックすると、他のチャートに影響が及びます。このときの動きには二種類あります。
一つは「クロスハイライト」です。デフォルトはこっちです。選択した部分が強調され、他の部分は薄く残ります。これはデータの全体感を保ちながら一部を強調する動きです。
私は、他のコースの説明では、このクロスハイライトをまとめてクロスフィルタリングと呼んでいますが、ちゃんと呼ぼうとすると、クラスハイライトだそうです。確かにハイライトですね。では、書式の相互作用を編集にして、強調からフィルターに変えます。
もう一つは「クロスフィルタリング」です。設定を変更して(書式 → 相互作用 → フィルター)とすると、選択した条件に合致するデータだけを残し、それ以外は完全に除外します。
ここで大事な整理です。
クロスハイライト:これは唯一無二で、フィルターペインでもスライサーでも再現できません。部分強調はクロスハイライトの特権です。
クロスフィルタリング:こちらは場合によって、スライサーやフィルターペインで同じ条件を設定したときと似た結果になります。
今、「顧客名=Fama Foords」をスライサーで選んだときと、ビジュアルレベルフィルターで「顧客名=Fama Foords」をクリックしてクロスフィルタリングしたとき。どちらも残るデータは同じになります。
違いは「どこから条件を与えたか」です。
スライサーはユーザーが操作する専用の部品
クロスフィルタリングはビジュアル自体を操作して条件を与える
どちらもダイナミックに動的な切り替えができる点で共通しています。
一方で、同じことをフィルターペインの「ビジュアルレベルフィルター」で設定すれば、ビジュアルを選んでそのビジュアルだけ「顧客名=Fama Foods」を表示させることも可能です。ただし、こちらはクロスフィルタリングやスライサーと違って「固定的」、いわばスタティックな設定です。レポートを開くたびに同じ条件が適用され、動的に切り替えることはできません。ページレベルでフィルターかけてもいいですが、まあ、いちいち大変です。
こうした時、実務での使い分けはこう考えると分かりやすいです。
クロスフィルタリングやスライサー:動的(ダイナミック)な条件操作。会議や現場での分析に便利です。ユーザーが操作して即座に切り替えることで、議論や意思決定をスムーズにします。
一方、
フィルターペイン(ビジュアルレベルフィルター):固定的(スタティック)な条件設定。レポートを配布したり、特定のテーマで一貫性を持たせたいときに使います。
いちいちユーザーが操作しなくても、制作者が意図した条件を強制できるのがフィルターペインの強みです。
クロスフィルタリングやスライサーは「動的」、フィルターペインは「固定的」。この違いを理解し、状況や目的に応じて使い分けることで、Power BI レポートの柔軟性と信頼性をバランス良く高めることができます。
以上、このレクチャーでは、クロスフィルタリングとフィルターペインの違いを整理しました。次のレクチャーでは、フィルターペインの表示・非表示の方法について解説します。
このレクチャーでは、Power BI Desktopでフィルターペインを非表示にする方法、そしてプレゼンテーションや会議の場で、ユーザーに混乱を与えないためのベストプラクティスについて解説します。
さて、これまで散々話してきたフィルターペイン。
通常、フィルターペインは画面右側に表示され、レポート作成者が設定した条件を確認したり操作したりできます。クリックすると、開いたり閉じたりできるのはおなじみですね。
しかし、会議や発表の場では、不要な情報を見せたくないことがあります。もしくは単純にキャンバスを広く取りたい時。その場合は、(上部メニューの「表示」タブを開き、「フィルターペイン」のチェックを外します)。これで、フィルターペインは完全に非表示になり、画面がすっきりとします。
ここで補足です。よく「フィルターペインや視覚化ペイン、データペインはデフォルトだから消せないのでは?」と聞かれます。実際には、フィルターペインだけは非表示にできます。一方で視覚化ペインやデータペインは非表示にはできず、最小化までが限界です。プレゼン時には、フィルターペインは非表示。その他は最小化しておくのがベストです。
では、説明のためにもう一度フィルターペインを表示にします。フィルターペインの中に「目玉アイコン」や「鍵アイコン」がありますね。これらは何でしょうか?
目玉アイコン → フィルターを非表示にする
鍵アイコン → フィルターをロックする
本来はこういう役割を持ちます。しかし、Power BI Desktopでクリックしても何も起こりません。これは、これらの機能が 、Power BIレポートをブラウザで表示できる、Power BI Service 上での共有や閲覧を前提にしているからです。
Power BI Desktopの場合、.pbixファイルをそのまま渡すと、相手は自由に編集できます。したがって、ロックや非表示の制御は効きません。ここは「押しても動かないけど、壊れているわけじゃない。単に違うサービスのためのもの」と覚えておくと安心です。
このコースはPower BI Desktopに特化していますが、念のため補足します。
Power BI Serviceでレポートを配布する場合には、これらのアイコンで、
ロック:ユーザーは条件を見られるが変更できない
非表示:条件自体を見せない
といったコントロールが可能です。
さて、実務でよくあるのは、プレゼンの場でフィルターペインを開いたままにしてしまい、参加者から「これ何の条件?」と突っ込まれて説明が脱線してしまうケースです。これは見せなくてもいい情報ですので、会議の前にはフィルターペインを非表示にしておくのがおすすめです。
今見ている画面では、フィルターかかっていないですよね。でも、私が実際に実務で遭遇したケースでは、えぐいくらいにフィルターがかかっていました。そしたら、プレゼンしてくれてるんだけど、フィルターで見えなくしている情報ってなんだろう?って気になって仕方なかったです。
一方、逆に「どういう条件でフィルターをかけているかが分からないと不安」という場面もあります。その場合は、スライドや配布資料に「このレポートは2025年度のみのデータです」と明記しておくと親切です。
もしくは前のレクチャーでも紹介したように、ページの名前に何の切り口で明記しておくのもありですね。
以上、このレクチャーでは、フィルターペインの表示・非表示について解説しました。
次のレクチャーでは、このコースを締めくくる前に、おまけとして、フィルターに関連してDAXで行うフィルター制御についてお話します。
ここまでのレクチャーで、みなさんはPower BI Desktopにおけるフィルター機能を体系的に理解し、実務で正しく使い分ける準備が整ったはずです。
そして、フィルターという観点で、次のステップとしておすすめしたいのが DAXによるフィルター制御 です。もしこんな状況に出会ったら、それはDAXの出番です。
ここでは、こんなケースではDAXでこんな対処ができるんだ、ということを知っていただければと思います。詳しいDAXの説明はしないので、ご安心ください。
まず、ケース1:スライサーを無視して全体を出したい時です。
カードビジュアルなどで「全体の売上」を常に出したいときがあります。他のビジュアルはスライサーの条件で動いても、カードの総売上だけは固定したい。今、全体はこうだ!というのをバシっと一つのカードで出し、各論を他のビジュアルで示すような時です。
このときに使うのが ALL 関数です。
今、左側のカードにはALL関数を使った売上集計が入っています。ちなみに、メジャーはこんな感じで、ALLはここで使っています。右側はALLを使っていない通常の集計です。スライサーを使って、セグメントを選択してみます。右側は金額が変わりますが、左側は変わらずです。クロスフィルターを使ってみます。やはり左側は動きません。
さらに、フィルターペインのページフィルターでやってみましゅ。やはり左側は動きません。
これは、ALL関数により、スライサーやクロスフィルター、はたまたページフィルターの影響を受けないようにしているからなんですね。
次にケース2:基本的にはフィルターを無視。でも、1つの特定のフィルター条件には反応させたい
地域別にみることがあるので、地域のフィルターには反応させたい。でも、他にはALLのように反応させたくない。こういうケースが出た時、使えるのが ALLEXCEPT です。EXCEPTは中学の英語で、EXCEPT FORで出てきました。~を除いて、という意味です。ちなみに、メジャーはこんな感じで、ALLCEPTはここにあります。
今、3つのカードがあります。最初は、前に見たALLです。これはフィルターを受け付けません。そして、右端は普通のカード。これはフィルターの影響をモロ受けます。
真ん中がALLEXCEPTを使ったカードです。今回、これは基本フィルターを無視しますが、地域だけには反応させるようにしています。セグメントやカテゴリ、市町村でスライサーやクロスフィルターで反応させると、ALLとALLEXCEPTは動きませんね。(カテゴリでサービスに選択は残しておく)
でも、地域をクリックします。そうすると、ALLは動きませんがALLCEPTは反応しました。さらに、クロスフィルターでも、地域の方のビジュアルをクリックすると、やはりALLは動きませんがALLCEPTは反応しました。
このようにPower BIには、ALLだけではなく、ALLEXCEPTといった細かいフィルターの無効化設定ができるDAXがそろっています。
では、ケース3です。フィルターの結果に、さらにフィルターをかけたい場合です。
FILTERというそのまんなのDAXを使います。今、この右側のカードに入っているメジャーはこのようになっています。ここにDAXのFILTERが使われています。
これはどういう数式かというと、外部のフィルターの結果を受けつつ、さらに、必ずカテゴリーでサービスでフィルターをかける、という数式です。
外部のフィルターとは、フィルターペイン、スライサー、そして、クロスフィルターを含みます。
いま、288,000となっていますね。今は、何もその他のフィルターかけていない状態です。でも、この数式は常にカテゴリで、サービスのフィルターをかけているので、こうした値になっています。
ちなみに、こちらは、カテゴリ毎の売上のビジュアルです。ここは、ここのサービスの棒にカーソルをあてると値が出てきます。同じ金額です。では、地域スライサーで関西としてみます。今、左側は関西の売上です。そして右側は、関西で、さらにカテゴリがサービスの売上。4万円。これは、このフィルターがかけられた、こちらのカテゴリの横棒グラフで確認できます。サービスにカーソルあてるとやはり4万になっています。
このようにFILTER数式は、集計においてさらにフィルターをかけることができます。
このDAX、FILTERは、おそらくみなさんがDAXを使うようになったら、よく使うDAXの一つになるかと思います。
以上、代表的な三つのケースを紹介しました。いかがでしょうか?
これらの例から分かるように、DAXは「フィルターペインやスライサーの限界を超える道具」です。
ALL → すべて無視して全体を出す
ALLEXCEPT → 特定条件だけ残す
FILTER → 条件を積み重ねる
実務では「なんとかこの値をフィルターで出したい!」と悩むことがあります。たまに、そうしたフィルター条件は、フィルターペインや、スライサー、クロスフィルターでは不可能な時もあります。そのとき「これはDAXが必要なんだ」と気づければ、DAXをやるにしても、一旦あきらめるにしても、無駄に時間を浪費せずに済みます。
フィルターペインを理解した今だからこそ、その「限界」も見えてきます。DAXを使えば、その先のより柔軟な制御が可能になります。
このコースの本題はあくまでフィルターペインですが、「次の一歩」としてDAXを検討してみていただければと思います。Power BIでできることの幅がぐっと広がります。
以上、このレクチャーでは、フィルターペインやスライサーではできない、DAXによるフィルター処理を見てきました。
次のレクチャーでは、このコース全体のまとめを行います。
このレクチャーでは、これまで学んできた内容を振り返り、このコースを締めくくります。
(Lec2 カテゴリのフィルターを開く)
まず、フィルターペインの基本を押さえました。単純な条件指定からアドバンスフィルターまで、文字列・数値・日付をさまざまな角度で絞り込めることを確認しましたね。特に、条件を組み合わせる際の「AND」「OR」の違いや、日付で相対的な期間を指定できる便利さは、実務で役立つ重要なポイントでした。
(Lec6)
次にフィルターの階層にフォーカスを移しました。ビジュアル、ページ、レポートという3つのレベルを理解し、それぞれどの範囲にフィルターがかかるのかを整理しました。注意点として、ページフィルターを設定すると、そのページに作る新しいビジュアルにも自動的にフィルターがかかること。そしてレポートレベルフィルターにすると、新しいページを作った際にも自動で適用されること。これが「気づかないうちに意図しないフィルターがかかっていた」というトラブルの典型例であることも確認しました。
(Lec7)
続いて、フィルターペインとスライサーの違いにも触れました。フィルターペインはレポート作成者が仕込む固定条件、スライサーはユーザーが自由に操作する動的な条件。この違いを押さえておくことで、会議や日常の分析で「どちらを使うべきか」の判断がしやすくなります。
(Lec8 スライサーの同期ウィンドウを開く)
さらに、スライサーの同期も紹介しました。複数ページにまたがるレポートで同じ条件を一貫して適用できる点は便利でしたね。ただし、レポートレベルフィルターとは異なり、ページごとに柔軟に同期を制御できるのが大きな違いでした。
(Lec 9)
また、クロスフィルタリングについても学びました。棒グラフや円グラフをクリックした時の「クロスハイライト」と「クロスフィルタリング」。スライサーと同じように動的に条件を切り替えられる一方で、フィルターペインのビジュアルレベルフィルターは固定的に条件を固定できる仕組み。この「動的」と「固定的」の対比は、実務でフィルターをどう設計するかを考えるうえで重要です。
(Lec 10 表示でフィルターペインを隠す)
加えて、プレゼンや会議の場面では、フィルターペインを非表示にしてキャンバスを広く使ったり、ユーザーに不要な混乱を与えない工夫も紹介しました。これは実務ですぐに試せるベストプラクティスです。
(Lec 11)
最後に、フィルターペインの限界を理解したうえで、発展的な手法としてDAXの活用を紹介しました。ALLやALLEXCEPT、FILTERといった関数を使えば、フィルターペインやスライサーだけでは表現できない条件を実現できます。これは「次のステップ」としての学習テーマでした。
以上、このコースではフィルターペインの活用方法をみなさんと深堀りました。
このコースが、みなさんがPower BIのフィルターペインを、実務で軽やかに使いこなす助けになれば、こんなにうれしいことはありません。
ここまでご受講いただき、ありがとうございました!
「Power BIパーツ」シリーズは、Power BIの中でよく使う機能を“パーツ”として切り出し、短時間でピンポイントに学べるコース群です。
入門コースで全体像をつかんだ後に、「あの機能だけをしっかり理解したい」「実務で使う前に整理しておきたい」というニーズに応えることを目的としています。ピンポイントのテーマをギュッと凝縮してコースにまとめています。スキマ時間で学べ、すぐに実務で使える知識として身につけられるのが特長です。
本コースで扱うテーマは、Power BIの中でも利用頻度が高く、かつ誤解されやすい「フィルターペイン」。基本フィルターからアドバンスフィルターまで、文字列・数値・日付をさまざまな角度で絞り込む方法を実演しながら解説します。
また、ビジュアル・ページ・レポートといったフィルターの階層構造や、スライサーやクロスフィルタリングとの違いと使い分け、さらに実務でよくある失敗例とその回避法にも触れます。
加えて、プレゼンや会議の場面で役立つ「フィルターペインの表示制御」や、複数ページをまたいで条件を統一できる「スライサーの同期」といった発展的なトピックもカバー。
最後にはフィルターペインを知った上だからこそ「フィルターペインではできないこと」を理解するために、ALLやALLEXCEPTといったDAXによるフィルター制御の入口も紹介します。
このコースを通じて、Power BIレポートでの「フィルターの設計と使い分け」をしっかりと身につけることができます。
レポートを利用するユーザーの混乱を防ぎ、かつ柔軟で信頼性の高い分析を提供するために、ぜひ本コースでフィルターペインを極めてください。