
「この設備、買ったほうがいいですかね」。現場からそう聞かれて、なんとなく回収できそうだから、と答えていた時期が私にもありました。稟議書を作る側に回ると、今度は数字をどう組めばよいかで手が止まります。利益で組んでよいのか。何年で回収できれば合格なのか。NPVとかIRRとか、言葉は聞いたことがあるけれど、自分では出せない。
この講座は、その場面のためだけに作りました。投資するかしないかを、現在価値で判断できるようになる。約束するのはこの1つです。
■ 先に、扱わないことをお伝えします
簿記や仕訳は扱いません。企業価値評価、つまり会社の値付けやM&Aの話も扱いません。それは別の範囲です。個人の資産運用も扱いません。この講座は、会社が設備や新規事業にお金を出すかどうかの判断に絞ります。
もう1つ。手計算はしません。IRRを電卓で解く手順や、株主が求める利回りを統計から推定する方法には踏み込みません。入門で挫折する一番の原因がそこだからです。表計算とAIに出させて、出てきた数字の意味だけを押さえます。
■ ファイナンスは「将来のお金を今の値段に直す」技術です
会計は過去を記録します。ファイナンスは将来を今の値段に直します。1年後の100万円と今の100万円は、同じ価値ではありません。年5%で割り引くと、1年後の100万円は今の952,381円です。この「割り引く」が分かれば、NPVもIRRもWACCも、全部その延長にあります。
講座では、この考え方を4つの道具に分けて進めます。①お金の時間価値(第2章)②NPV・IRR・回収期間の3つの判断基準(第3章)③判断に使う差額キャッシュフロー(第4章)④割引率の正体である資本コスト(第5章)。第6章で、この4つを使って1つの投資案を最後まで判断し、1分で説明する型に落とします。
■ 架空の投資案2つを、そのまま配ります
使うのは、案Aと案Bという架空の投資案です。案Aは設備更新。設備に800万円、あわせて運転資金が50万円増えるので、出ていくお金は850万円。5年間、毎年230万円が入り、5年目だけ運転資金が戻って280万円。案Bは販路拡大。400万円を投じて、4年間、毎年150万円が入ります。
この2案は、わざと答えが割れるように作ってあります。割引率6%で計算すると、NPVは案Aが1,562,066円、案Bが1,197,658円で案Aが上。IRRは案Aが12.3%、案Bが18.5%で案Bが上。回収期間は案Aが3.70年、案Bが2.67年で案Bが上。3つの基準で順位が完全に食い違います。どちらもNPVはプラスなので、「やる価値はあるが、どちらを選ぶか」という、実務でいちばん困る場面をそのまま体験できます。
数字は表計算のシートにして配ります。割引率を変えると答えがどう動くかも、その場で試せます。実在の会社ではなく、この講座のための設定です。
■ 視聴開始から6分で、最初の実感があります
第1章の3本目で手を動かします。配る指示文をAIに貼って、1年後・3年後の100万円が今いくらかを出させる。返ってきた952,381円という数字の意味を、自分の言葉で1文にする。それだけです。ここで「なぜ将来のお金は今より安いのか」が腹に落ちれば、あとの章は全部その応用です。
■ 都合の悪いことも、先にお話しします
・NPVがプラスでも、その投資で利益が出ると約束するものではありません。前提として置いた割引率とキャッシュフローの見立てが違えば、答えは変わります。第6章では、計画が何%悪化するとNPVがゼロになるか(この案Aでは20.4%)まで出して、どこまで耐えられるかを言葉にします
・税率30%、割引率6%、株主が求める利回り9%は、すべて例として置いた数字です。実際の税率は会社ごとに違い、業種別の割引率の水準もこの講座では示しません
・AIは、この分野でよく間違えます。第5章のAI演習では、わざと4つ(税金・減価償却・運転資金・割引率)を欠かした指示文を投げます。AIはNPVを2,952,146円と自信を持って返してきますが、正しく組むと1,562,066円。差は1,390,080円、倍近くずれます。AIに出させたものを、自分で見つけて正すところまでやります
・すでに払った調査費を理由に赤字の案件を続ける。運転資金の増加を投資額から落とす。こうした判断の崩れ方も、実例で扱います
■ 手を動かす資料
サンプル投資案データ(表計算のシート・6タブ=投資案の比較/案Aの組み立て/現在価値の表/感度分析/WACCの計算/自社データ差し替え用)、投資判断のAI指示文5本(Claude・Gemini・ChatGPT の3つ併記)、投資判断の1枚報告テンプレート(結論→いくら価値を生むか→利回り→どこまで耐えるか、の4文型)です。自社の案件があれば数字を差し替えるだけで同じ表ができます。数字を持っていない方も、案A・案Bのまま最後まで進められます。
■ 誰のための講座か
大手・中堅企業の若手から中堅で、設備投資や新規事業の稟議に関わる方。企画、営業、製造、情報システム、職種は問いません。この投資はやるべきか、という判断に数字を出す立場の方に向けて作りました。あわせて、中小企業の経営者・後継者で、設備投資の判断をする方にも届くように作っています。
私は中小企業診断士で、複数の会社を経営しながら、経理代行の現場で中小企業の設備投資の実際を見てきました。稟議で実際に何を問われるか、運転資金を投資額に入れ忘れると何が起きるか。教科書より少し手前の、現場で困る場面から話します。
見終わったとき、あなたの手元には、自分で組んだ投資案のキャッシュフロー表、NPV・IRR・回収期間の3つが並んだ比較表、そして投資の可否を1分で説明する4文が残ります。本編は全28本。週に2回、1回に5本ほど見ると、3週間で終わります。まずは第1章の3本目で、1年後の100万円が今いくらかをAIと出すところから始めてください。