
本講座では、M&A交渉に必要な実践的なバリュエーション技術を学びます。
中計シミュレーターの操作法を習得し、ベースケースやストレッチケースなど、様々な中期経営計画を作成できるようになります。
→ 公正価格範囲を自在にデザイン可能。
フットボールチャートを作成し、DCF法・マルチプル法・純資産法を見える化。
→ 価格交渉戦略を立案できるスキルを身につけます。
シナジーブリッジを作成し、シナジー効果の単独価値や価値変化を見える化。
→ 提案書や価値算定書の説得力を高めます。
この3つのツールを通じて、実務ですぐに使えるM&A戦略の策定力を習得できる講座です。
背景: 小規模M&A市場の急成長とM&A専門家の不足
小規模M&A市場は3兆円規模に成長。
小規模企業325万社によるディールが急増中。
M&A事業者は2000年代の290社から、2024年には2300社に増加。
それでもM&A専門家が不足している現状がある。
小規模M&Aに求められる資質
M&Aプロデュース力が必要(法務、会計、税務、知財、人事労務の多分野知識)。
一人でディールメイクからクロージング、PMIまで対応するスキルが求められる。
専門家をマネジメントする「指揮者役」としての資質が重要。
M&A交渉ゲームの目的
小規模M&A時代に対応する「指揮者役」を育成する。
実践的なスキルを養い、M&Aを完結させる専門家を育成する。
フットボールチャートの概要
純資産法、マルチプル法、DCF法の公正価格範囲をサッカー場の攻守陣地のように見える化する。
良いチャート: 3つの評価法が重なる範囲が明確で、合理的な公正価格範囲を提示する。
悪いチャート: 重なりがなく、主観による価格設定になり、戦略性が欠ける。
AとBの戦略的違い
A: 純資産寄りで、公正価格範囲内でできるだけ安く買いたいバイサイドの意図。
B: マルチプル法とDCF法重視で、未来価値や競合比率を反映し、高く売りたいセルサイドの意図。
バリュエーションの論理展開
演繹的論理:
「AだからB、BだからC」という流れで数値を算出するが、ツールに依存しがち。
例: 類似会社のβ値やWACC値を機械的に代入し、全体のストーリーが欠落する。
帰納的論理:
「DであるためにはC、CであるためにはB」という流れで論理を積み上げる。
初めに公正価格範囲のイメージを持ち、その裏付けとしてサンプル会社や数値を選定する。
イメージに合致する類似会社を対象にし、マネジメントインタビューを行う。
「後ろからディールを作る」アプローチ
帰納的論理で公正価格範囲のストーリーを描き、数値に戦略的メッセージ性を込める。
M&A交渉ゲームでは、この訓練を通じて、ディールメイクの実戦力を養う。
教科書的FCFの定義
営業利益から税金を支払い、設備投資額を差し引き、減価償却を足し戻す。
運転資金の増減に見合う現金を調整する。
FCF定義への疑問点
なぜ「減価償却」だけが特別扱いされるのか?
時間的平準化が必要な科目は他にないのか?
なぜ資本的支出は「設備投資」だけなのか?
「無形資産の減価償却(Amortization)」はなぜ含まれないのか?
異なる国や地域の税率は考慮されなくてよいのか?
なぜ運転資金だけ「増減」が考慮されるのか?
戦略的FCFの意義
意義①: 調整項目を追加することで、すべての法定調書科目が対象となる。
会計と税務、日本会計基準と国際会計基準の視点から、交渉用FCFを自在に設計できる。
意義②: グリーンフィールド法により、単独組織や単独機能の価値計算が可能となる。
特定科目分離前後のFCF差分で、ターゲット科目や組織状態の価値を算出できる。
シナジー効果の単独価値を計算し、シナジーブリッジを構築できる。
まとめ
戦略的FCFの調整項目は、交渉カードの多様化だけでなく、単独価値計算を可能にする強力なツールである。
グリーンフィールド法の概要
整地前の状態を「グリーンフィールド」(状態A)と呼ぶ。
整地後の状態を「ブラウンフィールド」(状態B)と呼ぶ。
状態Bは建物や有形資産が建設され、無形ながら付加価値が増加した状態を指す。
無形資産の単独価値の考え方
状態Bの価値から状態Aの価値を引くことで、無形資産の単独価値を抽出する。
算出方法
DCF法と同様に、将来FCF(フリーキャッシュフロー)を現在価値に割り引くことで計算する。
状態Aと状態Bそれぞれの事業計画から現在価値を算出し、差分を取ることで無形資産の価値を求める。
具体例
状態Bでは建造物が建設され、そこから収益が生まれる事業計画がある。
状態Aと状態Bの事業計画の差分が、無形資産の価値として算出される。
シート構成: 4つの青いシート(インプットシート)と5つの赤いシート(アウトプットシート)で構成されている。
仕組み:
青いシート(インプットシート)に係数を入力すると、自動的に赤いシート(アウトプットシート)に反映される。
具体例:
ベースケースシート(①) → ベースケースアウトプットシート(②) に反映。
さらに バリュエーションシート(③) や フットボールチャート(④) も自動で更新される。
活用:
フットボールチャートの全体像を確認しながら、シナジーケースの数値目標を試すことができる。
目的:
シナジー効果のひとつひとつと全体ストーリーを結びつけ、事業計画に落とし込む。
中計シミュレーターのインプットシート構成
青いベースケースシート
上部: 係数シミュレーション表
原価構造や収益構造の変化前後で株式価値を比較し、価値変化量を算出。
シートの各構成要素
黄色部分(原価構造)
科目の適切性とリスク評価が焦点。
判断に迷う科目は「FCF調整項目」に分類。
オレンジ部分(収益構造)
資金計画と投資計画が焦点。
調達資金額と投資対象の明確化、および収益力と投資回収リスクの評価。
むらさき部分(無形資産投資)
無形資産計上は大きなテーマのため、本講座では焦点外とする。
下部のむらさき部分(FCF調整項目)
目的: リスク科目を交渉カードとして活用する。
営業外利益・営業外費用・特別損失など、リスク科目の分類が可能。
判断がつかない科目は一律にFCF調整項目へ計上。
例: 退職給付引当リスク、品質保証引当リスク、子会社負債リスク、外国為替差益リスク、繰越欠損金など。
効果
戦略的FCFを自由自在に設計できるようになる。
上段:赤い「ベースケースアウトプット」シート
インプットシートの数値が反映された財務諸表が作成される。
3つの数値を手動でインプット(黄色部分):
売上高: TB(Trial Balance)の値が適切だが、通年計画値でも可。
利益剰余金期初残: ゼロから作成時は「ゼロ」、前期末と連続させる場合は数値を代入。
資本金: 変動がない場合はそのまま、変動があれば数値を代入。
中段: 経営指標チェックの一覧
KPI指標(収益性、短期支払能力、回転比率、レバレッジ比率)を確認できる。
ストーリー構築のポイント:
営業利益率や純利益率がKPIの場合、その改善策が重要。
ROICに閾値が設定されている場合、WACCを上回る施策が焦点になる。
最優先のKPIを認識することで、施策の種類や順序が変わる。
下段: 簡易バリュエーション一覧
WACC、永久成長率、センシティビティ分析のピッチ幅を設定可能。
DCF法の全プロセスの算出過程を確認できる。
事業価値および株式価値の公正価値範囲が最終的にアウトプットされる。
マルチプル法インプットシートの構成
類似会社AからGまでの PBRマルチプル、PERマルチプル、その他4種類の代表的なマルチプルを一覧表示。
各マルチプルについて 平均値、最小値、最大値 を確認できる。
データの期間
一般的には、直近3か月平均値~直近12か月平均値を使用。
3年平均値を使用することもあり、公正価格範囲のデザインに役立てる。
マルチプルの選択
基本的に PBRマルチプル と PERマルチプル(黄色部分)を主に使用。
補足として、その他のマルチプル(オレンジ部分)も活用される。
戦略的活用
自陣に有利な価格レンジを設定するために、適した企業をサンプリングし、マルチプル法による公正価格範囲をデザインする。
バリュエーションシートの構成
ベースケース、シナジーケース1、シナジーケース2 の簡易バリュエーション要素を一覧表示。
FCFの発射台
本モデルでは、X+4年目のFCFを発射台として、永続的価値を無限等比級数和で計算。
X+3年目やX+5年目のFCFを使用することも可能。
センシティビティアナリシス
WACCと永久成長率(g)にピッチ幅を持たせてセンシティビティ分析を実施。
これにより、公正価格範囲を算出する。
フットボールチャートシートの概要
これまで算定した全ての手法の公正価値範囲が示される。
自陣が主張すべき公正価値範囲をこのチャートを見ながら設計する。
シナジーストーリーの設計
シナジーケース1 と シナジーケース2 にストーリーをつけ、公正価値範囲をデザインする。
ストレッチケース1・2 のストーリーを定めることでわかりやすくする。
シナジーストーリーのポイント
「投資とその効果」をセットで説明することが重要。
投資(支出)はマイナス価値(ディスシナジー)だが、その結果としてプラス価値(シナジー効果)が生まれるため、両者を合わせて説明する。
シナジーケース1のストーリー概要
無形固定資産投資: 初年度に30実施(製造工程のDX化による生産性改善)。
DX化オペレーションコスト: 毎年⊿5実施(SaaS運営に伴う営業費用)。
売上原価1%削減: 製造工程のDX化による変動費1%削減。
販管固定費1%削減: バックオフィス合理化による固定費1%削減。
売上高成長率3%: 顧客単価アップにより1%増加を想定。
初年度売上高320: シナジー効果全体による売上の上方修正。
時系列ストーリー
初期投資(①無形固定資産投資)と 毎年の費用(②DXオペレーションコスト)の結果、
効果として、
③ 売上原価低減
④ 販管固定費削減
⑤ 売上高成長(初年度売上アップおよび成長率3%)
これらが発生するシナジー効果のストーリーとなっている。
シナジーケース2のストーリー概要
無形固定資産投資: 初年度に100実施(CI/CD化による製造開発プロセス改善)。
DX化オペレーションコスト: 毎年**△10**実施(DX化に伴う営業費用)。
買掛サイト1か月延長: 大口サプライヤーとの交渉により、1か月の延長を実現。
売上原価率49%に改善: 調達コスト引き下げによる原価構造効率化(原価1%削減)。
販管固定費1%削減: 間接部門の共通機能DX化によるコスト1%削減。
売上高成長率3%: 顧客単価アップによる1%増加を想定。
初年度売上高330: シナジー効果全体による売上の上方修正。
時系列ストーリー
初期投資(①無形固定資産投資)、毎年のオペレーション費用(②)、買掛サイト延長(③)といった投資およびファイナンス施策の結果、
効果として:
④ 売上原価低減(原価率改善)
⑤ 販管固定費削減
⑥ 初年度売上高アップ
⑦ 毎年の売上高成長(成長率3%)
これらのデータをシナジーケース2にインプットする。
フットボールチャートの役割
ストーリーごとに価値範囲をデザインできる強力な交渉ツール。
フットボールチャートを使いこなすことで、価格交渉を自陣に有利に進めることができる。
次のステップ
公正価格範囲を定量的に担保するために、シナジー効果ごとの単独価値を示すシナジーブリッジを作成する。
1. ケースの背景と目的の整理
現状:
Z社の出資比率:X社45%、Y社55%
X社は経営主導権(原価管理・生産管理・サプライヤー交渉)を持つが、支配権は未獲得。
目的:
Y社から株式10%を取得し、**経営支配権(過半数55%)**を確保する。
経営意思決定のスピード向上を通じ、企業価値を向上させる。
Y社との良好な関係維持のため、相当の買収プレミアを支払う。
2. 買収戦略のポイント
① 支配権の獲得による価値向上のシナジー効果
直接的効果: 原価低減、生産効率化、サプライヤー交渉強化。
間接的効果: ファイナンス施策(資金調達改善・コスト最適化)。
② 買収プレミアの適正水準の検討
ベースケース算定:
フットボールチャートを活用し、純資産法、マルチプル法、DCF法の各手法でZ社の企業価値を算定。
シナジーケース作成:
支配権取得後のシナジー効果(原価低減・成長率改善)を数値化し、シナジーブリッジで単独価値を示す。
プレミアム範囲: 良好なパートナー関係を維持するため、業界水準やY社の期待を考慮し、合理的な買収プレミアを設定。
提案書が説得力を持つための3つのポイント
ターゲット課題の明示
シナジー効果の選択肢として、「どのような課題があるのか」を具体的に示す。
具体的な施策の明示
施策内容を定量的に説明し、数値で裏付ける。
施策の単独価値の明示
シナジー効果の単独価値を示し、提案に具体性と説得力を持たせる。
典型的な失敗例
提案が漠然としており、具体的な数値が含まれていないと、経営陣は判断に困る。
例: 支配権獲得後の「売上増加」「原価低減」「DX化」などが示されても、定量的な根拠が欠けている。
解決策
数値を含んだシナジーストーリーを作成し、シナジー効果ごとの単独価値を明示することで、提案の具体性と説得力を高める。
目標: 「数値で攻める提案」 を行うことで、説得力を高める。
具体例:
提案内容
Z社の支配権獲得による連結子会社化を提案。
Z社の公正価格範囲: (数値A)
支配権移動後の中期経営計画に基づく公正価格範囲: (数値B)
シナジー効果の内訳
製造部門の原価低減効果(DX化による): (数値C)
間接部門の生産管理改善効果: (数値D)
大口サプライヤーの買掛サイト延長効果: (数値E)
顧客単価アップによる売上高シナジー: (数値F)
ディスシナジー効果
DX化初期投資: (数値G)
経常的なDX運営コスト: (数値H)
交渉戦略
シナジー効果の発現はX社の経営努力によるものであるため、過度な買収プレミアを避ける。
ディスシナジー効果を利用し、妥協価格を設計する。
まとめ:
数値を用いた具体的な提案により、聞き手が理解しやすく、説得力が格段に向上する。
フットボールチャートの役割
公正価格範囲を見える化する強力なツール。
ベースケース(買収しなかった場合のX社単独価値): 数値A
買収後の公正価格範囲(複数のシナリオを考慮): 数値B
数値A と 数値B は、フットボールチャートで算出可能。
シナジーブリッジの役割
シナジー効果の単独価値をつなぎ、企業価値の定量的な変化を説明するツール。
シナジー効果発現前後の価値の差分を見える化する。
具体的な進め方
中計シミュレーターを使って、シナジーブリッジの描き方を習得する。
数値Cから数値Hまでのシナジー効果の単独価値を算出し、価値変化を具体的に示す。
無形固定資産投資の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 投資後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 投資前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、無形固定資産投資の単独価値を算出する。
結果:
無形固定資産投資の単独価値は 16~27 であることが判明。
DX化オペレーション費用の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): DX化後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): DX化前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、DXオペレーション費用の単独価値(ディスシナジー)を算出。
結果:
DX化オペレーション費用の単独価値は、⊿80~⊿97 のディスシナジーであることが判明。
売上原価1%削減の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 売上原価1%削減後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 売上原価1%削減前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、売上原価1%削減の単独価値を算出。
結果:
売上原価率1%削減の単独価値は、34~41 であることが判明。
販管固定費1%削減の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 販管固定費1%削減後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 販管固定費1%削減前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、販管固定費1%削減の単独価値を算出。
結果:
販管固定費1%削減の単独価値は、34~42 であることが判明。
初年度売上高+売上高成長率シナジーの単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 売上高シナジー発現後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 売上高シナジー発現前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、売上高シナジーの単独価値を算出。
結果:
売上高シナジーの単独価値は、31~40 であることが判明。
フットボールチャート × シナジーブリッジの活用
X社がZ社の支配権を獲得すると、全体価値が35~53増加する。
買収プレミアムをその10%(3.5~5.3)としてY社に支払うことで、Z社を連結子会社化できる。
これにより、支払価格と得られる価値が一目瞭然となる。
シナジーストーリー1: 交渉戦略まとめ
提案内容
Z社の支配権獲得による連結子会社化を提案。
Z社の公正価格範囲: 369~472(数値A)
支配権移動後の公正価格範囲: 404~525(数値B)
シナジー効果の内訳
無形固定資産投資(初期投資30): 16~27(数値C)
製造工程DX化による売上原価1%削減: 34~41(数値D)
バックオフィス生産性向上による販管固定費1%削減: 34~42(数値E)
顧客単価アップによる売上高シナジー: 31~40(数値F)
ディスシナジー効果
経常的なDX運営コスト: ⊿80~⊿97(数値G)
買収プレミアムの設計
100%買収プレミア: 35~53
10%買収プレミア: 3.5~5.3
シナジー効果の発現はX社の経営努力によるもの。過度な買収プレミアを避けつつ、Y社の功績を報いるため、公正価格範囲内で妥協価格を設定し交渉する。
ポイント
数値を用いて提案することで、聞き手が理解しやすく、説得力が高まる。
フットボールチャートとシナジーブリッジを組み合わせることで、支払価格と得られる価値が明確になる。
無形固定資産投資の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 投資後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 投資前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、無形固定資産投資の単独価値を算出。
結果:
無形固定資産投資の単独価値は、64~90 であることが判明。
DX化オペレーション費用の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): DX化後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): DX化前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算し、DX化オペレーション費用の**単独価値(ディスシナジー)**を算出。
結果:
DX化オペレーション費用の単独価値は、⊿161~⊿192 のディスシナジーであることが判明。
買掛サイト1か月延長の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 買掛サイト1か月延長後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 買掛サイト延長前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、単独価値を算出。
結果:
買掛サイト1か月延長の単独価値は、57~58 であることが判明。
売上原価率1%削減の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 売上原価1%削減後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 売上原価1%削減前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、単独価値を算出。
結果:
売上原価率1%削減の単独価値は、34~42 であることが判明。
販管固定費1%削減の単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 販管固定費1%削減後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 販管固定費1%削減前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、単独価値を算出。
結果:
販管固定費1%削減の単独価値は、34~41 であることが判明。
初年度売上高+売上高成長率シナジーの単独価値の算出方法
手法: グリーンフィールド法を使用。
状態B(ブラウンフィールド): 売上高シナジー発現後の価値範囲
状態A(グリーンフィールド): 売上高シナジー発現前の価値範囲
状態Bから状態Aを引き算することで、売上高シナジーの単独価値を算出。
結果:
売上高シナジーの単独価値は、54~68 であることが判明。
シナジーストーリー2: 交渉戦略まとめ
提案内容
Z社の支配権獲得による連結子会社化を提案。
Z社の公正価格範囲: 369~472(数値A)
支配権移動後の公正価格範囲: 451~579(数値B)
シナジー効果の内訳
無形固定資産投資(初期投資100): 64~90(数値C)
大口サプライヤー交渉(買掛サイト1か月延長): 57~58(数値D)
製造工程DX化による売上原価1%削減: 34~42(数値E)
バックオフィス生産性向上(販管固定費1%削減): 34~41(数値F)
顧客単価アップによる売上高シナジー: 54~68(数値G)
ディスシナジー効果
経常的なDX運営コスト: ⊿161~⊿192(数値H)
買収プレミアムの設計
100%買収プレミア: 82~107
10%買収プレミア: 8.2~10.7
交渉のポイント
シナジー効果はX社の経営努力によるものであり、過度な買収プレミアを避ける。
Y社の功績を最大限報いる形で、公正価格範囲内で妥協価格を設定し交渉を進める。
まとめ
X社が支配権を獲得すると、全体価値が82~107 増加することが明確に示される。
フットボールチャートとシナジーブリッジを用いることで、数値に基づいた具体的な提案が可能となり、説得力が高まる。
フットボールチャートとシナジーブリッジの本質
買収プレミアの許容範囲の設定とその合理的な説明にある。
最終目的は、バイサイド(買い手)とセルサイド(売り手)の妥協できる買収プレミアに落とし込むこと。
シナジーケース1と2の組み合わせ
シナジーケース1 に寄せる:
買収プレミアをできるだけ抑えるための戦略。
シナジーケース2 に寄せる:
買収プレミアを許容する場合の戦略。
多様な公正価格範囲の設計
シナジーケース1と2を柔軟に組み合わせることで、状況に応じた多様な公正価格範囲を設計できる。
これにより、交渉を自陣に有利に進めることが可能となる。
デューディリジェンスの戦略的思考法 - 要約
ここまでのプロセス
あなたはX社のアドバイザーとして、Z社買収のプラス価値を提案し、フットボールチャートとシナジーブリッジで具体化。
この提案を基に、X社経営陣が買収意向を決定し、買収プレミアのスタンスを明確化。
X社とY社間で基本合意書(LOI)を締結し、デューディリジェンスフェーズへ進む。
デューディリジェンスの戦略的スタンス
アクセル役:
Z社の現状価値を評価し、買収後のシナジー効果の実現性を積極的に主張する。
ブレーキ役:
Z社の現状リスクやシナジー効果の実現可能性を冷静に精査する。
戦略的思考のポイント
リスク科目の予見: Z社の経営や財務状況から潜在的なリスクを洗い出す。
単独リスク価値の算定: 各リスクを定量化し、交渉カードとして活用する準備を整える。
バランス重視: プラス価値を最大化しつつ、リスクを最小化する合理的な判断を行う。
目的
デューディリジェンスで得られた情報をもとに、公正価格範囲を再設定し、X社が有利になる価格交渉を実現する。
M&Aのフレームワーク
交渉軸1: 買収対象の決定 - 「何を買うのか」を明確化する。
交渉軸2: 評価手法の決定 - 評価方法を明確化する。
交渉軸3: 収益力の実態性 - 販売力や収益力の実態を確認する。
交渉軸4: 資産の実態性 - 資産や負債の過小性・過大性を評価する。
交渉軸5: FCFの実態性 - FCF調整項目を特定し、実態を明確化する。
デューディリジェンスでの交渉ポイント
攻防戦が主に発生するのは交渉軸3~5。
理由: M&Aのウォータフォール構造
上流工程(ステップ1)で、「何を、どの条件で、どう取引するか」を決定。
次に、下流工程(ステップ2)で、交渉軸3~5のリスクや調整を交渉する。
戦略的思考の必要性
ステップ2では、疑わしいリスク科目を「FCF調整項目」として予見し、論点をそちらに誘導する思考が求められる。
このアプローチにより、交渉を有利に進められる。
まとめ
M&A交渉は、上流で全体構造を決定し、下流でリスクを調整するウォータフォール型のプロセスです。デューディリジェンスでは、特に交渉軸3~5を重点的に精査し、リスクを交渉材料として活用することが重要です。
交渉軸4: 資産の実態性における子会社の過剰負債リスクの対応策 - 要約
リスク指摘事項
負債返済スケジュールの厳しさ: 毎年⊿4の元本返済と利息負担が継続的に発生。
CoC条項の存在: 支配権変更後に過剰債務が顕在化するリスク。
対応策
C社の弁済計画を精査: 負債返済スケジュールを確認し、影響を評価。
リファイナンス提案: 買収前にY社/Z社主導でCoC条項を交渉し、債務条件変更を要求。
過剰負債リスクの定量化: 中計シミュレーターで単独リスク価値を算出。
リスク算定プロセス
ブラウンフィールド価値(状態B): 元本弁済スケジュールをFCF調整項目として算定。
グリーンフィールド価値(状態A): 負債返済負担がないベースケース、またはC社収益改善計画を基に算定。
単独リスク価値: 状態Bから状態Aを引き算し、⊿63~⊿75と算定。
活用方法
交渉カード化: 負債リスクを定量的に提示し、価格調整や条件交渉に活用。
リスク軽減の提案: 弁済計画や収益改善策を提示し、リスクを最小化。
結論
中計シミュレーターを活用して過剰負債リスクを交渉材料として提示することで、価格交渉を有利に進めると同時に、リスク軽減策の提案によって実務上の信頼性を高めることが可能。
本講義のまとめ - 要約
フットボールチャートとシナジーブリッジによる「数値で攻める提案方法」を習得。
習得内容
妥協価格を想定し、交渉ストーリーとツールを連動させる方法。
経営判断に必要な定量的根拠を提示する方法。
以下の定量的算出法:
支配権を持たない場合の株式価値(ベースケース)。
支配権を持つ場合の株式価値(シナジーケース1, 2)。
シナジー効果の内訳(シナジーブリッジ)。
買収プレミアを含む合理的な買収価格。
デューディリジェンスの応用
予見したリスク科目の価値を算定し、交渉カードとして活用する方法。
実務への活用
これらのツールと方法は、実務ですぐに役立つ具体的なスキルとして応用可能。
本講座で学ぶこと
中計シミュレーターの操作法を学び、様々な中期経営計画を作成。
→ 公正価格範囲を自在にデザインできるスキルを習得。
フットボールチャートを使い、DCF法・マルチプル法・純資産法を見える化。
→ 価格交渉戦略を立案できる力を身につけます。
シナジーブリッジの作成方法を学び、シナジー効果の単独価値を明確に見える化。
→ 提案書や価値算定書が実務レベルで強力な武器になります。
各セクションの内容
セクション1: M&A基礎知識の復習
→ フットボールチャートの意義、FCF定義式、公正価格範囲の理解
セクション2: 中計シミュレーターとフットボールチャートの作成法
→ シナジーシナリオをベースに交渉戦略を策定
セクション3:シナジーブリッジの作成法と提案書への落とし込み
→ シナジー効果を定量化し、説得力のある提案書を作成
本講座の目標
M&A実戦力を鍛える:理論・ツール・反復練習を通じて、M&A交渉スキルを習得します。
小規模M&Aプロ人財へ:一人でディールメイクからクロージング、PMIまで伴走できるスキルを身につけます。