
コースの目的と全体像を確認します。また、コース成功の条件について、以下の点をお伝えします。
・楽しく取り組むこと
・ルールの中で戦うのではなく、ルールを作っていくという発想を持つこと
・米国だけでなく、EUや中国など視野を広げ、それぞれの考え方・思想に目を向けること
まずブリュッセル効果とは何かを確認しましょう。EUの規制が一方的に世界に広まる効果のことをブリュッセル効果と言いますが、どういった経緯で誕生したのかなどもぜひ押さえてください。
ブリュッセル効果は「厳格な規制」という条件がありますが、なぜEUで他国に比べて厳格な規制が求められてきたのか、その背景を説明します。
ブリュッセル効果が生まれるための条件は何でしょうか。EUという大きな市場規模や実際の規制能力以外にどのような条件があるのかをまず考えます。また、同じ条件を満たせば他国でも同様の効果を持たせることができるという点も押さえましょう。
ブリュッセル効果における事実上の効果(de facto)と規範上の効果(de jure)について解説します。
世界中でEU法類似の規制が作られているとして(規範上のブリュッセル効果)、それはなぜ起こるのか考えましょう。そもそも米国類似の規制や中国類似の規制はあまり聞かないはずで、そこにEUの特殊性があります。
ここでは典型的にブリュッセル効果が表れる分野についてみていきます。まずは環境規制、食品安全規制、消費者保護規制の例を見ましょう。
次に個人データ保護分野でのブリュッセル効果について確認します。シュレムスⅠⅡ判決など、米国に対しても大きな影響を与えているという点も知っていただきたいと思います。
最後に競争法(日本でいう独占禁止法)の分野について押さえます。EUの競争法は近年でも立法借用や模倣訴訟が多く、注目度の高い分野です。最近でいうとデジタル市場法などもEUのGAFAM規制として成立しており、各国が参照しているという点も押さえましょう。
ここでは参考までにブリュッセル効果を含むEUの規制戦略についてまとめておきます。どういった分野でEUが規制を進めているのか、その全体像をイメージできるようになりましょう。
ここから、EUのGAFAM規制に入ります。まず、EUとして(日本もですが)GAFAMを生み出せないという根本的な悩みがあることは押さえましょう。欧州にそういった企業がないからこそデータ保護や独占、あるいは安全保障など、様々な観点が問題になります。また、21世紀型の独占は20世紀のものとことなり、単純に分割すればよいというわけではありません。どのように新しい独占に対して規制をかけるかは世界的な課題でもあるのです。
まず、データガバナンス法・データ法に関する概略を説明します。データガバナンス法はデータ共有の枠組みとして日本の行政に、またデータ法はIoT関連のデータの透明性として家電メーカーなどの企業に影響してくるはずです。
次にデジタル市場法について概説します。すでに執行も始まっているデジタル市場法ですが、GAFAM狙い撃ちの排除法として、特定領域への立法となっています。こういった形の規制が良いかどうかも含めて今後の動向が問われますが、各国で似たような立法ができており、日本にも影響している点は押さえましょう。
次にデジタルサービス法の説明を行います。これは検索プラットフォームなどにコンテンツ監視の義務を負わせるものですが、これもある意味で競争環境を固定化してしまう面を持つものです。また、プラットフォームにコンテンツの偏った表示をさせないよう欧州メディア自由法にも触れています。
日本でも2024年6月スマホソフトウェア競争促進法が成立しましたが、デジタル市場法の持つ各国への影響を考えます。
ブリュッセル効果はグローバルにEU規制を広める効果を指しますが、EUの価値観が必ずしも他国の価値観と一致するわけではありません。この点、例として米国の価値観との違い・対立をまとめています。
米国との伝統的な価値観とEUの価値観は大きく異なるものの、トランプ政権のあり方は意外とEUの考え方に近いとも指摘されています。特にプラットフォームに対する捉え方は、今までのSNSは偏向的にコンテンツを表示していたとトランプ大統領が指摘するとき、それはコンテンツに介入して平等に表示させるという政府の意思を意味しています。となれば、それはEU的価値観と結局同じなのでは?という点に触れています。
ここから、ブリュッセル効果の限界と今後について考えます。まず、2024年のドラギレポートにおいてEUの成長率の低さや生産性の問題が指摘されており、2025年からは規制ではなくイノベーション中心でやっていこうという雰囲気が生まれているということです。日本も同様にイノベーションが起こっていないという点で大いに参考になる動きと言えるでしょう。
ブリュッセル効果を規制戦略の要として使いながらもイノベーションの枯渇に悩むEUについて、そもそも規制とイノベーションの両立は可能なのか?という問題に触れます。あるいは、ドイツ流の社会市場経済とイノベーションは両立するのか、と言っても良いかもしれません。いくつかの具体的事例を見ながら、是非考えてみましょう。
第2次フォンデアライエン委員会においては、ドラギレポートその他の影響もあって、大きく規制緩和の姿勢を見せています。もちろんそれが本当に実現するかどうかは分かりませんが、今までの姿勢を変えていることは事実で、この点注視する必要があります。
EUと米国、中国が三つ巴になっているデジタル覇権の動向について、トランプ2.0のEUへの影響を考えます。どのようなシナリオがありえるのか、ブリュッセル効果が弱体化するシナリオと維持されるシナリオを考え、皆さんなりに将来を予測してください。
同様に、中国の影響を考えます。EUや米国に代わる代替として中国的規制や価値観が入ってくる可能性があります。世界的に見ればやはり権威主義的であっても経済的に成功できるという実例として中国には大きな魅力を感じる国家が多いものです。足元で中国の経済成長は鈍化して将来不安もありますが、アクターとしての中国は押さえておきましょう。
最後に、こうしたブリュッセル効果の動向を踏まえて日本企業はどうすべきかを考えます。
参考として、中国におけるAI産業の発展やイノベーションが起こっている前提条件を考え、それがEUにとってどういう意味を持つのかを押さえます。今の世界で大きなイノベーションを起こしているのは米国の西海岸と中国の南部沿岸部だけと言え、その背景を考えることはイノベーションを渇望しているEUや日本にとって大きな意味があるでしょう。
全体のまとめです。ブリュッセル効果という耳慣れない言葉を学んできましたが、そこにはもはや覇権国ではない欧州各国のある種の知恵であったり、いかに国際的なプレゼンスを維持するかの工夫であったりが見て取れるはずです。企業としてEU規制にどう対応するかを考えると同時に、日本にとっての示唆も考えていただけると非常に嬉しく思います。視聴者の皆さまが今後の世界動向を読む一助になれば幸いです。
1.【受講者の悩みや問題】
EUについて、興味はあるが遠い国としてなかなか学べていない。外部環境の変化の一つとして欧州の動向を学びたい
EUの規制力は強力だと聞くが、実際のプロセスや背景がよく分からない。また、ブリュッセル効果という言葉は聞いたことがあるが、実際にどのように世界を動かしているかの具体的なイメージが掴めない
GAFAへの規制強化が世界的に注目されるが、具体的にどのような規制内容なのか理解できていない
もはや覇権国ではないEUがどのように世界に影響を及ぼそうとしているかを知りたい。また、第2次トランプ政権や中国の台頭がある中で、今までのようにEUが規制パワーを発揮し続けられるのか、将来における規制動向についても考えてみたい
EUの規制パワーと同時に、日本同様、大きなイノベーションを生み出すことができていない点について、EUがどのように考えているかを知りたい。近年のEUの工夫などを参考にしたい
EUだけでなく、グローバル規制が複雑化する中、デジタル経済に対してEU・米国・中国のそれぞれがどのような規制アプローチを取っているのか、整理できていない
そんなあなたのために、このコースを作りました!
2.【このコースの特徴】
ブリュッセル効果という切り口からEUの規制力について理解を深める。EU全体の規制戦略について、全体像と限界を理解する
世界で注目されているGAFAM規制の動向を理解する
既に覇権国ではないEU諸国がいかにプレゼンスを維持しようとしているのか、日本にとっての参考とする
単純にEUが規制パワーとして強いというだけでなく、足元のEUの悩みやトランプ政権の影響、中国の影響を踏まえた考察を起こっている
EUの説明だけではなく、デジタル経済に対する規制をどう考えるか、米中EUの3つの観点から検討している"
※ 本コースではEUの組織構造やEU法の基本といったベーシックな基礎知識には触れません。あくまでもEUの規制パワーの現状に関するコースになりますので、EUに関する基本的な内容については別コースをご受講ください。
3.【カリキュラムの概要】
第0章:はじめに
第1章:ブリュッセル効果とは
- ブリュッセル効果の条件/典型的に表れる領域/ほか
第2章:EUのGAFAM規制
- EUの悩み/デジタル市場法(DMA)・デジタルサービス法(DSA)/ほか
第3章:ブリュッセル効果の課題と今後
- トランプ2.0の影響/アクターとしての中国/ほか
■ 補足事項
事例・データは2025年5月(コース作成時の最新情報)までのものを使っています
上述のように、EUの組織構造やEU法の基本などの基礎知識は扱いませんのでご注意ください。