
「株は自分が6割持っているから、うちは大丈夫」。そう思っていた社長が、増資の話が出た途端に手が止まる。何株出すと、自分の議決権は何%になるのか。役員を選ぶ権利は残るのか。定款は変えられるのか。株主総会の議事録は顧問の先生が作ってくれているけれど、なぜその決議が必要なのかを、自分の言葉で説明できない。
この講座は、その場面のためだけに作りました。自分の会社で、いま自分が何を決められて、何を決められないのかを数えられるようになる。約束するのはこの1つです。
■ 先に、扱わないことをお伝えします
司法書士・行政書士の試験対策は扱いません。上場会社のコーポレートガバナンスの実務も扱いません。会社設立の手続きを代行するための手順書でもありません。この講座は、中小企業の経営者・後継者・役員と、総務や法務を兼務している管理部門の方が、自社の状況を自分で数えられるようになることに絞ります。
もう1つ。条文は覚えません。会社法は1,000条近くありますが、答えている問いは3つです。誰が決めるのか。何を分けるのか。どう組み替えるのか。この3つで整理すれば、条文を覚えなくても、自社の状況が読めます。
■ 株主名簿を1枚、配ります
使うのは、たかはし製作所という架空の会社です。資本金1,000万円、発行済株式200株。社長が120株で60%、弟が40株で20%、専務が30株で15%、取引先が10株で5%。取締役会を置き、取締役3名、監査役1名、任期は10年。株式には譲渡制限があります。
この1枚を、講座の最初から最後まで使います。社長は60%持っているので、取締役の選任も解任も、決算の承認も、配当も、単独で決められます。ところが、定款の変更、事業譲渡、合併、解散は決められません。3分の2に届かないからです。そして、残る3人の合計40%は3分の1を超えているので、3人が結束すれば、社長が通したい特別決議を止められます。弟と専務の2人だけでも35%で、同じことが起きます。
6割持っていても、決められないことがある。これが、この講座の入口です。
■ 増資と相続で、比率は勝手に動きます
第4章では、この会社が外部の取引先に50株を第三者割当したらどうなるかを計算します。社長の比率は60%から48%に下がり、役員の選任すら単独ではできなくなります。過半数を保てる上限は39株。40株でちょうど50%になり、過半数を割ります。守りたい壁が3分の1超なら159株まで出せるので、守る壁によって、出せる株数は4倍違います。
第6章では、社長の120株が3人の子に均等に分かれたらどうなるかを見ます。各20%で、誰も過半数を持たない会社になります。ここから先、誰に・いくらで・どう渡すかは、この講座の範囲の外です。ただ、渡す前に、いま誰が何を決められるのかを数えられなければ、渡す話は始まりません。
■ 視聴開始から7分で、最初の実感があります
第1章の3本目で手を動かします。配る株主名簿の株数を合計で割り、3分の1・2分の1・3分の2の3本の線を引く。それだけで、社長が何を決められて何を決められないかが読めます。ここが腹に落ちれば、第2章以降は全部その応用です。
■ 講座で扱う4つ
・会社の器(第2章)— 株式会社と合同会社の違いを意思決定・機関・費用の3点で整理し、定款のどこを見るか、取締役会を置くと何が変わるか、任期を10年にすると何が起きるかを扱います。最後に、自社の登記事項証明書を6項目で点検します
・誰が決めるのか(第3章)— 株主総会・取締役会・代表取締役の3層、普通決議と特別決議と拒否権の3つの壁、1%・3%・1株の少数株主の権利。AIに株主名簿を渡して決議ごとの可否表を作らせ、AIが「以上」と「超」を間違える3か所を自分で検算します
・株式と資金調達(第4章)— 借入と増資の違い、第三者割当の希薄化、譲渡制限は相続には効かないこと、配当は分配可能額の範囲でしか出せないこと
・組織を組み替える(第5章)— 増やす・分ける・一緒になる・渡すの4つの型、事業譲渡と会社分割の違い、社長と会社は別人格であること(利益相反取引・競業取引)、手続きを飛ばすと何が起きるか
第6章で、自社の議決権・機関・定款を1枚にまとめ、リスクの順位をつけ、顧問の専門家に10分で相談する型に落とします。
■ 都合の悪いことも、先にお話しします
・条文は2026年9月時点のものです。法制審議会で会社法の見直しが議論されていますが、まだ改正されていません。実行するときは、必ずそのときの条文を確認し、顧問の税理士・司法書士・弁護士に相談してください。この講座の役割は、相談に行く前に、自分で自社の状況を数えられるようにすることです
・正当な理由のない解任で問題になる損害賠償の金額、「重要な財産」の金額基準、分配可能額の正確な計算式には踏み込みません。事案によって変わるところは「事案による」と言い、正確な額は税理士に、と繰り返します
・中小の株式会社で決算公告を実際にやっている会社は多くありません。ただ、やっていないことが違法状態であることに変わりはない、と両方お伝えします
・AIは、この分野でよく間違えます。「50%以上」と「50%超」、「3分の2以上」と「3分の2超」を取り違えます。第3章のAI演習では、その3か所を最初から疑って、境界の数字で検算するところまでやります
■ 手を動かす資料
会社の仕組みシート(表計算・6タブ=議決権を数える/増資の希薄化/決議の早見表/登記と定款の点検/決められる範囲を1枚に/完成形)、会社の仕組みのAI指示文5本(Claude・Gemini・ChatGPT の3つ併記)、専門家への相談メモ1枚のテンプレート(4つの部品)です。自社の株主名簿があれば数字を差し替えるだけで同じ表ができます。株主名簿が手元にない方も、たかはし製作所のまま最後まで進められます。株主名簿が見当たらないなら、それ自体が発見です。探し方は第2章の演習で扱います。
■ 誰のための講座か
中小企業の経営者・後継者・役員。そして、管理部門で総務や法務を兼務していて、株主総会や取締役会の議事録は作っているが、なぜその決議が必要なのかを説明できない方。増資、役員の交代、事業の切り出し、相続。そういう話が出たときに、まず自分で数えてから専門家に相談したい方に向けて作りました。
私は中小企業診断士で、複数の会社を経営しながら、経理代行の現場で中小企業の会社運営の実際を見てきました。「うちは取締役会がある」と思っていたら定款に書いていなかった。株主名簿が最後に更新されたのが10年前だった。そういう場面から話します。
見終わったとき、あなたの手元には、自社の株主名簿に3本の線を引いた表、増資で比率がどう動くかの計算、そして自社の「決められる範囲」を1枚にまとめた相談メモが残ります。本編は全28本。1週目に第1・2章、2週目に第3・4章、3週目に第5・6章と進めると、3週間で終わります。動画を止めて手を動かす演習が5つあるので、その時間は別に取ってください。まずは第1章の3本目で、株主名簿を3つの壁で読むところから始めてください。